一人称単数

2010-06-23 12:43:52 | Weblog

普段は何も考えずに「俺」って言っている。

子供の頃は「僕」って言ってたな。


広島の(男の)子供は、「わし」って言ってた。本当に。

今でもそうだと思う。

初めて聞いたときはインパクトあったな。

幼児が「わし」って・・。

まあそれはいいとして。



村上春樹さんの(初期の)小説の主人公は「僕」だ。

名前さえ紹介されない。

初期三部作の次の長編作品である

「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」では

「ハードボイルド・ワンダーランド」の方の主人公は「私」だった。

「世界の終わり」の主人公との違いが明確だったし、

なによりもチャンドラー風味が効いていて、とてもよかった。

「私」=「僕」であることがだんだんわかってきて、

それはそれでとても内面的で切なかった。



中島らもさんの本においても、一人称代名詞はずっと「僕」だったのだけれど

晩年に「俺」に変わった。少し違和感があった。


最近読んだわりにしょうもない「食」に関するエッセイ本で、

(賞賛にも罵倒にも値しないので著者の名前も出さない。)

著者が自分の事「俺」って言っていて、

何か意味もなくエバられてるような感じがして不快だった。


でも例えばもし、山口富士夫さんの自伝で自分のこと「僕」って言ってたら

それは「変」だ。

キースリチャードもきっと「僕」って言わないよな。



「僕」だと弱すぎるし、「俺」だと尊大すぎる。

日本語は、喋る相手が「年上」か、「年下」か、

もしくは「格上」か「格下」か・・・を見極めないと

話し出す時に「僕」か「俺」かを選ぶのも困難だ。


相手との「距離感」というのもあって、

打ち解けた間柄だったら俺だって、年上のひとに「俺」って言う。


謙譲の美徳、というのも根深い。

尊大に構えて自慢話をする、なんてのはタブーだ。

そんな奴、いっぱいいるけど。


いろいろと面白くもあるのだけれど、

面倒臭いと言えば面倒臭い。


「俺」と「僕」の中間があればいいのにね。


永遠の「ないものねだり」だ。




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