サリンジャーのファンって、
ちょっと研究者的にならざるを得ないような所が
あると思うのだけれど、どうなのかな。
図書館で借りて、サリンジャーの実の娘である
マーガレット・アン・サリンジャーが書いた
「我が父サリンジャー」を読んだ。
いろいろと衝撃の、ほとんど暴露本である。
サリンジャー本人は、さぞかし激怒しただろうと思う。
いろいろと考えさせられた。
何よりも驚いたのが、サリンジャーは第二次大戦に出兵し、
ヨーロッパ戦線最悪の「バルジの戦い」などを
生き抜いてきた兵士であることを
恐らく、
誇りに思っている(であろう)ということだった。
彼は半分ユダヤ人なのだが、
ナチスに降伏直前のオーストリア(!)に留学みたいな形で
滞在している。その後、彼が深く愛した滞在先のユダヤ人家族は
全員、強制収容所で殺されている。
血も凍るような体験。
彼がいかにナチスを憎んだか、我々には実感出来はしない。
そのことはやはり、兵士として戦争に向かう
強いモチベーションになっただろうと思う。
それでも復員後のサリンジャーは
直接的に戦争を語ろうとはしなかったのだ。
嬉々として戦争を語るヘミングウェイとはだいぶ違う。
戦争に関わるすべての物事を
強烈に辛辣に否定するカート・ヴォネガットともだいぶ違う。
もうひとつ、知りたかった事実。
「ハプワース16,1924」が出版された1965年以後、
サリンジャーの作品は発表されていないのだが、
それ以後の作品は、やっぱり存在するみたいだ。
サリンジャーの死後、何らかの形で発表されるだろう。
サリンジャーは「書けなくなった」のではないのだ。
そのことを確信した。
いつか読めるのかな?
「グラス家もの」の、続きが。