ビートルマニア、という人種があまり、好きではなかった。
何でだろう?
多分、ビートルズに集中する感じが、偏狭な気がしていたのだ。
だからラジオのNHK-FMで「ディスカバー・ビートルズ」という番組が
あるのは知っていたのだけど、聴く気がなかった。
しかしある時、トラック運転中に ふ、とその気になったので
スマホの「らじるらじる」で聴いてみたら、
トライセラトップスの和田唱がパーソナリティで、
それなりにマニアックではあったけれど嫌味がなく、楽しく聴けた。
それからはたまにだが、「らじるらじる」で聴いている。
トライセラトップスはヒット曲しか知らないのだが、いいバンドだと
僕としては高評価している。そのヴォーカルギターの和田唱というオトコは
何と、あの、デザイナーでイラストレーターの大御所中の大御所、
和田誠の息子さんらしい。僕は和田誠のファンみたいなものである。
あの煙草のハイライトのパッケージデザインも和田誠の作品である。確かそうだ。
かなりのジャズ好きで、晩年は村上春樹とジャズの本を作っていた。
和田誠は何年か前に鬼籍に入られた。
その息子の和田唱。それはまあ・・・育った環境のせいで、趣味がいいのは当然かもしれない。
血?・・・・そんなものには興味がない。
で、先週放送の「ディスカバー・ビートルズ」がすごかったのだ。
明日(2023年の11月26日)の午後一時五〇分まで、
「らじるらじる」の聞き逃しサービスで無料で聴けるから、
興味ある人はぜひ聴いて欲しい。
何がすごかったか?というと、
先月リリースされたビートルズの新曲、「ナウアンドゼン」の
徹底解剖、ということをやってるのだ。
それで、「失われたBメロ」の話が出てくる。
この、今回の新曲のもとになったジョンの、
加工前の音源がネットでは出回っているらしい。僕はそれは知らなかった。
そして、その元の音源には「Bメロ」があったらしいのだ。
わりと複雑なコード進行。転調を繰り返す。
今回リリースされたヴァージョンではすっぱりとその「Bメロ」はカット
されているのだそうだ。
むむむ。
和田唱くんは、その「Bメロ」がとても好きで、カットされたことに納得がいかないみたいだ。
(カットしたのは誰あろう、サー・ポール・マッカートニーだ。)
で、和田くんとしてはその「Bメロ」の良さを理解して欲しいみたいなのだが、
「ネットで出回っているもとの音源」を番組で流すわけにはいかない
だろうと思う。著作権の問題もある・・・・・かな?
著作権登録してなければ問題もないのだが、その辺は不明だ。
しかし「海賊音源」みたいなのを天下のNHKで流すのは無理だろう。
そこで和田唱くんは、どうしたか?
自分で、歌ったのだ。
ただ歌ったのではなく、スマホの多重録音アプリを使って、
ひとりで声も何重にも重ねて、バッキングはアコギ一本で、
その「Bメロ」を使った独自解釈の「ナウアンドゼン」を録音し、
番組で流したのだ。
それが・・・・良かった。
コーラスも完璧だし、その「Bメロ」も、複雑で美しい。
和田君ヴァージョンは逆に、「サビ」をカットしてるのだ 。
その結果・・・・ポップさは後退したが、深みは増した。
もうなんだか、眼前の風景がグニャッと歪むくらいの衝撃があった。
こんなことサラッとやってしまうなんて、
和田くんって すげえミュージシャンだなぁ、と素直に感心した。
番組後半で、この和田くんヴァージョンの「ナウアンドゼン」は、流れる。
聴かないと、勿体ないと思う。
明日の午後一時五〇分がリミット。それまでは
「らじるらじる」の聞き逃しサービスで聴ける。
聴いてみてくれ~。