能町みね子 というひとが面白くて、
知ったのはNHKラジオ第一の朝の番組(のパーソナリティだった)で、なのだが、
このひとは「過去に男だった、現在は女」という経歴を持っていて、要は性転換手術をしているのだ。
まだ手術する前から女性としてOL生活をしていた、という面白い人である。
この人の出世作、ともいうべき本「オカマだけどOLやってます」を文庫で読んでいるのだが、
面白い。
実を言うと僕自身もわりと、
男であることが微妙に馴染めないような思いを少年時代にしたクチで、
成長してからも、遊びで女装してみたり、
髪の毛を伸ばしては女の子と間違われてそのことに喜んだり、
買う服も、スカートははかないが サイズの問題で(小柄なのだアタシは)、女物ばかりだったり、
強迫観念的・・・ってほどではないが明確な「女性変身願望」みたいなものがあったり・・・・とかしたので、
この人に、他人事じゃない、というような親近感を持っている。
しかし今回この本を読んでみて、
「切実さ」という点で、やっぱ全然違うんだ・・・と思い知った。
僕は自分が「男性」であることに今は全然、違和感はないし、
恋愛的に女の子が好きだったし、今でも好きだし、
男友達も好きだけど、その「好き」は、やっぱ「恋愛」とか「性愛」とかとは
何光年もかけ離れてたし、今でもそうだし。
中性っぽいスタイルや長髪は今でも好きだけど、
例えば「性転換手術」などというのは どう考えても、やりたくないし、
想像すると怖い。想像さえしたくないほど怖い。
自分自身は、わりに、面白くもなんともない「ストレートの男性」だったのだな、と
改めて気付く。
だけど
トランスジェンダーの人に、興味はあるのだ、何故か。
何かそれって、生物の根源的なところの問題のような気がするから。
問題、と言ったけど、間違ってるとかそういう風には思っていないのだ。
実感としてはわからないけど、そういうこともあるのだ、世界には。
でも「ストレート」であったことで、いろいろと面倒くさくなくて自分はラッキーだった、
とも思う。
身近に、そういう人がいないから、全然想像もつかないのだ、性倒錯の世界って。
こないだ「夜想」で出会った面白い男は
「皆で今からオナベの店、行きましょうよオゴるから!」と言っていた。
オナベ、というのは、オカマ、の対称語で、「フィメール・トゥ・メン」、
つまり、「男性化した(したい)女性」だ。
とても興味があったのだがいかんせん、僕はただのストレートの男なのだ。
・・・行かなかった。
でもやっぱ、
自分が「ただのストレートの男」でしかない、という普遍的事実は
精神的にタフでもなんでもない人間にはとても、幸運なことなのかもしれない。
「世間との違和感」というのは少年時代からずっと、ずっと、ずっと、ある。
僕はいわゆる「普通」ではないし、死ぬまで そんな風にはなれない、と思う。
でも性的には「ただのストレート」なのだ。
ちょっとがっかりする反面、ちょっとだけ、ホッとしたりも、する。