職業安定所、略して 「職安」。
現在ではハローワークとか言うらしいが、そんなチャラい和製英語より、
「職安」 という響きの方が好きだ。
昔、憧がれていたライブハウス「LOFT」は、新宿の”職安通り”にあった。
旧LOFTの話だから、今は移転して、新宿の違うところに在る。
十数年前「ばるぼら」で「LOFT」に出演したとき、何かの話のついでに(今は亡き)父親に、、
「今度、新宿の”職安通り”にあるライヴハウスに出るんだよ」と言ったら
「懐かしいな、若かった頃俺もそのへんでよく、仕事したりしたよ」と話してくれた。
そのことは俺にとっても感慨深く、”職安通り”に着いた時は、懐かしささえ感じた。
・・・・・・生まれ故郷である、戸山ハイツから近かった、ってこともあるんだけどね。
さて、時間は流れて21世紀になり、俺は紆余曲折あってまた(何度目か?)求職することになり、
七転び八起きの末、「職安」で仕事を見つけた。これがまた「昭和」な感じの、レトロな運送会社で。
まずは、
面接に行った。都市部の、わりに賑わってる地区に、大きな駐車場。舗装は、されていない。
入り口の看板に大きく「福笑運送」(筆者注・・仮名)と毛筆体で書いてある。
京都市内の、ビジネス街のビルが林立してる土地柄なのだが、そこだけ平地で、大型トラックが数台停めてある。
同じ敷地内の大通り沿いには別の和風な名前の、これまたレトロな定食屋が。
ふうん・・・・と思いながら敷地内の自転車置き場にバイクを停めていると、
定食屋から出てきた白髪白髭のご老人に怒鳴られる。「なにしとるんじゃそこで!」
ひぃ・・・・と思いつつ「「運送屋さんのほうに面接で来ました~」と言うと。
「何だと?・・・・・・・ほんなら、入れ」と。
この人は社長さんだった(運送会社も定食屋も同じ経営だった)。
職安からこの時間に面接行きます、と連絡行ってるはずなんだから、怒鳴らないでよね(笑)。
さて、社長さんに連れられて定食屋裏の運送事務所に行くと、
そこは壁に毛筆で「根性」と書かれた額縁があり、ソファがあり、チワワがいた。昭和だ。
社員は十数人のようで、社長の息子さんが専務をされているようだ。社長の奥さんも、定食屋にいるみたい。
家族経営って、ほんわかしていいよね。
運送事務所の事務員もいるのだが、昼時に行ったらエプロンをつけて、定食屋で働いていた(笑)。
従業員(運転手)には、定食屋の弁当を持たせてくれることもあるそうだ。
さてさて、
とても感じの良い人達だったので、俺はそこで働かせてもらうことになった。
乗るのは、積載量13トン800、思いっきりフルサイズの大型トラック、ウイング車である。
振込み銀行を聞かれないな・・・と思っていたら給料は「手渡し」で頂けるみたいだし(珍しいよね?)、
制服・・・というか作業着はどうするのかな?と思っていたら
社長が着ていた「福笑運送」ネーム入りのジャンパーをくれて、「わしのじゃけど、やる」とのこと。
どこまで昭和なんだ(笑)。
あそこの敷地内だけ昭和で時が止まってるかのようだ。まるで高倉健が働いていそうな、運送会社。
雰囲気は昭和だが、トラックはちゃんとエアサス、GPSタコグラフ装備で、ちゃんとしてる。
でもトラックのオイル交換は自分でやるらしい。・・・・・昭和だ。
土日に休みが多いのが嬉しい。ココロおぎなくライヴ出来る、というものだ。
運送事務所も定食屋も、建物は風格ある・・・というか古いんだが、
新しい建物より断然、俺はそういうのが好きなのだ。俺のバイク停めてても、似合うし。
・・・・・・・・・・・・・・さてさて、今後、どうなりますやら。
「昭和レトロ運送会社での、片山道郎奮闘記」。
また落ち着いて、面白いことあったら書くよ。