カワセミ側溝から(旧続・中岳龍頭望)

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

変人だけど、凄い人  植村直己物語

2022-05-08 | 映画

植村直己物語/佐藤純彌監督

 冒険家植村直己の伝記映画。登山に魅せられ、世界的に主要な山の登頂に成功するなど世界的にも著名な植村だが、あんがいどんくさいところがあって、人と協調するのが苦手な青年だった。冒険には果敢に攻めて成功させるものの、実際には気弱でわがままで、落ち着きがない。親兄弟の支援を受けて学生時代から山に明け暮れ、しかし就職もできず、冒険の体験談などによる著作等で細々と食っていくよりなかった。まだ冒険そのものにも莫大な資金がいることで、友人や先輩を含む各種の企業や個人から支援を受けて冒険を繰り返していくのだった。日本に滞在中によく立ち寄る食堂の娘に恋をして結婚するが、ほとんど家を空けたまま、奥さんにお金を入れるなどすることもなったようだ。
 そのような根無し草のような冒険野郎だったが、将来には北海道に登山などを通じた教育施設を作る夢を持つようになる。そのような夢を抱えながら挑んだ北米マッキンリー(デナリ)登頂は成功するものの、下山途中で帰らぬ人となってしまう。そのような植村の冒険の一生を、割合克明に描いた作品なのではある。主演が西田敏行で、実際にエベレストや北極圏などにロケに行って、過酷な環境で植村を演じている。妻役が倍賞千恵子で、「男はつらいよ」のさくら役とはずいぶん違った情熱的な女性を演じている。そういうところは単なる記録映画とは違う魅力かもしれない。
 僕の子供のころに活躍した著名な冒険家なので、当然記憶にある。行方不明後著書も読んだ。エスキモーとの交流などが書かれていたと思う。また冒険しているときに、戻ったら何を食おうとか考えているエピソードがあって、食べるのを楽しみにしていた鳥の発酵食品を誰かに食われて発狂したように怒ったなど、なかなか面白い人なんだな、と思っていた。映画の演出にもあるが、冒険に対する執着と、生活に対するいい加減さがあって、人付き合いはあんまり得意では無かったようだ。そういう中妻となった公子との精神的後ろ盾を得て、長期にわたる冒険を成功させたのだが、けっきょく後に帰らぬ人になってしまった。冒険家として慎重な人ともいわれていたが、それだけ冬山の厳しさというのは、想定を超えるものなのだろう。また、定職に向かない人だったとはいえ、冒険で食べていく道を作った人ともいわれていて、その後多くの日本人の冒険家が生まれる素養を育んだ功績も認められているところである。合掌。
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