カワセミ側溝から(旧続・中岳龍頭望)

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

文化とパニックの相性   EXITイグジット

2021-09-30 | 映画

EXITイグジット/イ・サングン監督

 最初は何かグダグダしたホームドラマのような感じで始まるが、母親の古希かなんかのお祝いで親族が集まってホテルでパーティをしていると、街の中心部でテロなのか自殺なのか訳の分からない男が、大型トラックに積んだ毒ガスをまき散らすのである。都市部は毒ガスの白い霧に包まれて死の街へと変貌していく。ビルに取り残された人々は、ガスの届かないできるだけ上の階へ逃げ惑うことになる、というパニック映画。
 設定が荒唐無稽でガスなのに白くて迫ってくるのがわかりやすい設定である。いくら大型の設備を備えた兵器だとはいえ、都市部の街を覆いつくすほどのガスで充満させる上に、高層ビルの頂上に至るまで、ガスの霧に包んでしまうというはいかがなものか。少しでも触れるようにガスに包まれると死んでしまうらしいのだが、それだと数十万、いや、百万人単位の死者のオーダーになる大惨事ではなかろうか。ヘリコプターで数十人救助するのに、人を選んでいる場合じゃないのではなかろうか。
 まあ、突っ込みどころ満載だけど、それなりにスリルのある設定が続いて、見飽きない展開ではある。最初に壁のぼり(クライミングっていうんだっけ?)の技術に長けた・しかしダメ男が主人公であることがわかっているので、そういう男が日頃の汚名返上で活躍するというのが、痛快であることが見て取れる。
 また、この物語がものすごく韓国社会を如実に表現している点も見どころかもしれない。見た感じ東アジアの似た顔の親戚国家である韓国が、中国や日本といかに違った文化を持った国であるのか、実によく分かるのである。家族間の階級があったり、上のものは下のものに平気で暴力をふるったりする。言葉遣いも家族間の階級で使い分ける。そうして感情が爆発してすぐにパニックを起こす。うわあ、これってホントにかなり違うなあ、と感心してしまった。もちろんデフォルメはあるんだろうけど、実に大変である。こういうパニック映画は、基本的に韓国文化と相性がいいのではなかろうか。
 という訳で実際はあんまりおもしろくないが、そういう風に比較文化的に面白がってみる映画ではないだろうか。
コメント
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