カワセミ側溝から

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

閉塞感のある殺人事件   罪の手ざわり

2021-09-14 | 映画

罪の手ざわり/ジャ・ジャンクー監督

 4つの群像劇になっている。というかオムニバスのような感じか。お話はつながりなく独立しているように見える。一つ目はまちの炭鉱の利益を独占する個人資産家と村長に逆恨みして、逆切れする男の話。二つ目は家族には出稼ぎと偽って、強盗殺人を繰り返しながら生きている男の話。もう一つは不倫相手の男の妻から復讐された上に、やくざ者に言いがかりをつけられて逆切れする女の話。最後は、仕事のトラブルで別の町に流れてバーテンの仕事をする若者が、売春まがいのダンサーに恋をするがハードルが高く、また元のトラブル元のチンピラに脅されて……。というもの。おそらくだが、今の中国社会のどうにもならない閉塞感を映像化したという感じの作品群なのかもしれない。
 しれない、というのは、実際にはこの話の意味というのは、最後までよく分からないのである。監督としては、単にバイオレンスを描きたくて、その水戸黄門的なカタルシスを狙ったのかもしれないのだけど、説明はないので、何か深読みできそうな感じのある映像になっているのだ。しかしながら大して意味なんてたぶんない訳で、ショックとしての映画作りなのだろうと思う。名作感があってなかなかいいというのは分かるけれど、それ以上なのかというと、そうでもないんじゃなかろうか。
 散弾銃で撃たれる人の姿がこんな風になるんだろうな、というのは、それなりにショッキングである。他にも銃は出てきて人が殺されるが、中国であっても、銃というのは手に入りやすいものなのだろうか。三作目は果物ナイフなのだが、これも使い方によっては、非常に殺傷力が高いのかもしれない。急にうまいアクションのような展開になり、どうしたんだろう、とは考えてしまうわけだが。
 ちょっと前の映画かもしれないが、今時でありながら煙草を吸う人は多いし、庶民とやくざものの境もあいまいだ。暑いのかもしれないけれど、何か皆急に薄着になったりして、誰もかれもだらしなくやくざ的だ。そうしていつ暴発するかわからないような緊張感がある。そういう中で、人々は不機嫌に暮らしている。そういう一定の空気感が、今の中国の現実を伝えているということなのだろうか。そうかもしれないし、何か本当には分かりようがない。(※後で調べたら、実際の事件をヒントにしてドラマ化したのだそうだ。事実がどのように起こったか、推察して映画にしたということだろう)
 あとでネットで確かめてみると、この映画、今でも中国では公開されていないのだという。意味深だが、これを一般大衆に見られるとマズイ、と思っている中国共産党がいるんだろうか? それこそが、映画的には一番面白い感じがするけど、どうなんでしょうね。一般の中国の人に、ぜひ見てもらって感想を聞きたいものである。
コメント
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