カワセミ側溝から(旧続・中岳龍頭望)

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

強い思いは抗いがたい   寝ても覚めても

2021-09-18 | 映画

寝ても覚めても/濱口竜介監督

 最初の舞台は大阪で、写真展に行くと気になる男がいて、なんとなく後をついていくと、そのまま声を掛けられ接吻される。衝撃的に出会って運命的に激しく惹かれあいながら付き合っていたのだが、不思議な男(麦)バクは、ある日失踪してしまう。時は流れ東京の会社のオフィスにコーヒーなどを納めている喫茶店で働く朝子は、バクと瓜二つの男亮平と知り合う。あまりにバクと似ているために(東出の二役だから当たり前だけど)最初は避けているが、亮平の方はそういう朝子に猛然とアタックする。そうして二人は付き合うことになり、やがて結婚しようとするのだったが……。
 とにかく知り合ってから接吻ばかりしている、盛りのついた二人の姿が何度も描かれる。もともと激しく愛しすぎているあまり、その感情を持て余している。しかし男は消え、代わりに瓜二つの上に、より堅実ないい男が現れる。そうしてやはり激しい感情はよみがえるのだが、それは、もともとのバクへの感情なのか、それとも新しい亮平へのものなのか、ということなんだろうか。そうして衝撃的な展開へと流れていく。
 後で聞いて分かったが、この映画をきっかけに主演の二人である東出と唐田は不倫関係になって、しばらく(今もなんだろうか?)激しいバッシングを受け、どん底生活に陥っているらしい。そうなのか、という思いで振り返ってみると、映画の演技とはいえ、本当に二人は激しく惹かれあって、求めあっている姿が真実めいて見える。唐田の演技は未熟さもあって、おぼつかない感じもあるが、そこがかえって一途な激しい思いを秘めている若い女という雰囲気を醸し出している。この二人の愛は、抗いがたく本物ではないのか(映画だから偽物なんだけど)。
 実際には女の行動にも、そうして不思議な男バクの行動にも、僕はまったく共感が持てないが、やってしまったものは仕方がない。そういう理屈ではない男女の激しい感情が、いや、正確には女の心の動きが見事に描かれている。なんだか凄いなあ、という思いで最後まで少し圧倒されながら観ていた。こんなことが頻繁にあるようでは世の中困ったことにはなるかもしれないけれど、あれば面白いかもしれませんね。
コメント
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