カワセミ側溝から(旧続・中岳龍頭望)

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

本を愛する人を愚弄してはいけません   ビブリア古書堂の事件手帖

2021-09-26 | 映画

ビブリア古書堂の事件手帖/三島有紀子監督

 子供のころ祖母の蔵書を触ったために激しい折檻を受け、そのショックの後遺症で活字だけの本を読むことが出来なくなった青年がいる。祖母が死に、その蔵書を改めて手にすると、それは夏目漱石の全集本の一冊で「それから」であった。そうして奥付には漱石の贈呈のサインがある。興味がわいて、古書を専門とする店に寄って確認してもらうと、そのサインは偽物だといわれてしまうのだった。さらにこれは個人情報なので、詳しいことは教えられないと……。
 古書が好きでたまらない人々が、その古い本にまつわる背景で、さまざまな人間模様を推理することができる、ということかもしれない。しかしながら同時に古書蒐集というのは狂気じみていて、希少な本は暴騰してとんでもない値段になってしまう。しかし何としてでも手にしたいという思いの強い人間が現れると、盗みや脅しまで発展してしまうのである。そういう狂騒に巻き込まれた本をめぐって、さらに大きな事件性の高い騒動に巻き込まれていくのだった。
 前半はそれなりにいい感じなのである。しかしながら、恋の話も混ざりながら、結局古本の価値などどうでもいいように思えるような行動を、登場人物たちは繰り広げてしまう。早々に事件を表面化させることで、被害も少なく済んだだろうことを、自分たちの命まで危険にさらして、問題を持ち越してしまう。犯人も悪いは悪いが、これだけの推理力を持った人々なので、容易に誰が怪しいか特定もできていたはずだ。犯罪を助長させたのは誰なのか、ということになると、主人公たちの罪も重いのではあるまいか。
 現代の活劇はそうだけれど、実際は古書をめぐっての過去の恋の物語も重要である。しかしながらこれも、なんだかちょっと残念な話のような気もする。それはやっぱり現代へのつなぎ方の問題もある。むしろつなげすぎているあまり、おかしくなっているというか……。
 そういう訳で、なんだかとてもイライラさせられる。この人たちは頭がおかしいのではないか。いや、率直に言って馬鹿なのではないか。映画を流しているモニターの画面に向かって、「バカ」っと叫んでやりたくなる。もう本当になんとかしてくださいよ、頼みますから。そういう愚作なんであるから、お勧めできません。
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