将棋の渡辺くん/伊奈めぐみ著(講談社)
まだ一巻のみ(おそらく続巻があるだろう)だが紹介。渡辺明将士のおくさんが、夫である将士の日常を描いた作品。たぶん実話をもとにしているはずだが、これがのほほんと面白いというか、なかなか凄まじい変人ぶりで、結構おどろいてしまった。僕は将棋を指せない訳ではないが、いわゆるすぐに負けるのであまりのめり込むことのなかったクチだが、将棋が強いというだけで、それで飯を食っている人たちというのがそれだけですごいことだが、将棋のことを考えすぎるあまり、ほとんど世間的にズレまくっていて平気そう(そうでもないこともあるようだけど)な感じがとても良い。何というか、男として共感できるというか、勝負の世界として苦しいが、しかしそれはそれで前向きに取り組んでいるというか、まったく変人万歳である。まあ変人になりたい訳ではないけれど、変人が存在するのは嬉しいです。
将棋のことを考えたいために他のことには無頓着になるというのは分かるが、例えば干支や血液型なども知らないようなのだ。実は僕も最近干支は憶えたが、血液型は知っている。まあ、そしてそれらに興味が無いのはよく分かるのだ。子供に聞かれても知らないものは知らない。そういうところが潔いのだが、むしろ知らないままで生きていきたいような感じが特にいいと思う。そうして異常に虫が苦手で、しかし死んだネズミなんかは平気で触ることが出来る。ぬいぐるみが大好きで集めていて、モー娘のコンサートに行くくらい好きらしい。若者らしいということでもあるし、子供のままというのもあるかもしれない。将棋の展開はかなり深く読んでいるくせに、いわゆる人の空気は読めない。運動神経は良かったと思っているようだが、当然そういうのはダメなようだし、服を自分で買うこともできないようだし,あや取りさえできない。ライターはつけられないし、蚊取り線香も立てることを知らなかったらしい。文章で書いても変なことばかりだが、これを漫画で紹介してもらうと、この面白さが倍増するだろう。
実は渡辺将士のことは、それなりに以前から見たことがある。雑誌にエッセイを書いていたのも知っている。強いというのも知っていたが、ここまで変人とは知らなかった。実物も「魔太郎」に似てユニークである。もちろんこの漫画を読んで、ますますファンになってしまった(将棋は興味ないけど)。