カワセミ側溝から

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

彼らの恋は成就したのだろうか  エスパー魔美

2016-04-03 | 読書

エスパー魔美/藤子・F・不二雄著(小学館コロコロ文庫)

 少年漫画だし作者の藤子不二雄の芸風から考えると大変に意外なことだが、女の子の裸ばかりが描かれている漫画である。そのためなのかは知らないが、それなりに根強い人気があるのではなかろうか。もっとも裸やパンツの露出が多いのは、魔美ちゃんが画家であるお父さんのモデルをしている為であり、エスパーで空を飛んだりできるが、普段着がスカート姿であるためである。中学生という設定なので、本人は無邪気だし、さらに恥ずかしがっている風ではない。聞くところによると、父親目線の娘の裸であるから、エロ目的の裸ではないということらしい。そういう事情を読者が汲んで漫画を読むものなのかは疑問だが、しかしながらドキドキして読んだ少年は多かったと聞く。まあ、そういう話を聞いたので、改めて読んでみようというところはあったかもしれない。
 基本的にギャグ漫画で、短編の読み切り作品である。これだけの数の作品を、さらにそれなりの完成度でもって描ききる力量は、さすが漫画の大家であるな、と感心する。ストーリーの構成も見事だし、しょうも無いギャグはあるにせよ、笑わせるところもそつがない。魔女の血筋である背景と、その能力を基本的には人助けに使う純粋さ、そしてテレポーテーションを行う仕掛けなどにそれなりに納得のいく筋立てになっている。また、その能力を磨くにあたってのパートナーである高畑君との恋の駆け引きもあったりする。
 おおむね首肯できる内容なのだが、作者が少年漫画である自主規制が働いたのか、金の問題や倫理観などに、何かおかしな健全さが多く見受けられた。人によってはガンまで直してしまうが、それならほかの人だって困っている人はいるだろう。普通なら医者の代わりになるべき能力である。さらに金に困った人に大金を授けるようなことをするが、そのおせっかいはちょっとどころか大変に行き過ぎている。他人に慈悲を授ける前に、自分の周りをどのように救済すべきか、少しくらいは悩んだ方がいいのではないか。
 そういうところは確かに物足りないので、途中で何度か放り出そうかとは考えた。僕は実につまらない大人になったものだな、と思う。むしろ最初に自分がエスパーではないかと勘違いする高畑君との関係と、まだまだエスパーとして不完全でミスを犯す頃の話の緊張感が面白かっただけに、後半はやや力が分散して失速してしまったのかもしれない。こんなことなら素直に子供時代にちゃんと目を通しておくべきであった。
コメント
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