カワセミ側溝から

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

BUNGO~ささやかな欲望~【告白する紳士たち編】

2016-04-05 | 時事
BUNGO~ささやかな欲望~【告白する紳士たち編】

 「鮨」関根光才監督、「握った手」山下敦弘監督、「幸福の彼方」谷口正晃監督、の三篇。オムニバス映画。
 「鮨」では、寿司屋の常連の先生と呼ばれている男が、実は子供の頃には何も食べられず、母が握ってくれた鮨によって徐々に食べることが出来るようになった過去を語る。この話を聞いているのは、通っている寿司屋の看板娘で、要するに娘目当てに寿司屋に通っている訳ではないという理由を話している訳で、娘はなんとなく先生に恋心を抱いているようだが、そのことを指して、先生は断りを入れているという構図になるのかもしれない。だから娘は悲しい訳だ。
 問題は、やはりこの先生という男の話は事実らしいということもある。事実を話すんだから問題が無い話になると、ややこしいが話が成り立たない。鮨を食わねばならぬ事情がある偏屈な男は、年齢の若すぎる女とは付き合う訳にはいかない別の事情があるのかもしれない。それを汲めるくらいの感性がお互いにあるから成り立つ話で、昭和の初めくらいの人なら、それくらいのことは分かったというお話なのかもしれない。

 「握った手」では、映画館で隣の女の手を思わず握ってしまう男の話。結局それから男はフラれるが、そのことを大学の同級である女に話す。そうして同じように手を握ったらどうなるのか、というお話。なんとなく男は横柄で、相談された女学生が迷惑そうである。フラれたことは悲しいことだが、その理由をよく知りたいという欲求と、しかし女学生にも惹かれているという変な男である。眼鏡をかけていても女学生は魅力的だが、眼鏡を外せというのは、現代人の僕から見るとたいした偏見である。この話が一番わかりにくかったかもしれない。

 「幸せの彼方」では、戦争で片目を失った男と見合いして一緒になる女の話。女役には朝ドラで人気が出ている波留が演じて美しい。片目の男は、実は前妻に逃げられた上に、人に預けた子供がいる。見合いの時に話すつもりだったが、女のことを好きになり言い出せなかった。ところが女にも過去があり、同じように預けられて育った。そうして親が迎えに来るのをずっと待っていたのだった。
 女を失うのが怖くて不機嫌に過去を語る男に対して、最初から何か屈託なく可愛らしいながらも、過去に悲しい思いを抱いている女のコントラストが良い感じである。
 僕は見合い結婚では無かったが、このように過去がお互いにある見合いという夫婦生活も、なかなかスリリングで良いのではないかと思った。もちろん恋愛でも過去のことをすべてわかり合えているとは言い難いのだけれど…。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする