カワセミ側溝から(旧続・中岳龍頭望)

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

一芸で飯を食うのは大変である   さよならドビュッシー

2016-04-19 | 読書

さよならドビュッシー/中山七里著(宝島社)

 音楽専門科のある高校に、ピアノの特待生として進学の決まっている遥。一緒にレッスンを受けている従姉妹のルシアは、スマトラ沖地震で両親を失い同居している。祖父の香月玄太郎はある程度の資産家で、車いすの介護生活でありながらそれなりに元気で、当主としての威厳を保っている。遥の両親や、同じく同居している叔父さん、そして玄太郎の介護士さんが帰った後、離れにルシアと共に泊りに行っている夜に火事になり、玄太郎とルシアは焼死、生き残った遥も全身に大やけどを負う。整形科医の奇跡的手腕で元通りになったらしいとはいえ、全身包帯に包まれ松葉杖の生活のまま進学し、特待生としてピアノのレッスンに励む。そういう中母親まで何者かに殺される。どうも玄太郎の遺産を巡る思惑が、その背景にあるらしい。ピアノの個人レッスンの先生として岬という人物がいて、これが事件の謎解きと遥のリハビリを兼ねたコンクールへのカギを握っているのだが…。
 まあ、普通は手に取らんだろうな、という作品には違いないが、息子が面白かったと言って貸してくれたので読んだ訳だ。なるほど、若い人にはウケるのかな、という感想はもった。少なくとも中年男性向けでは無いし、少しだけミステリ作品好きとしても、ちょっと不完全燃焼かもしれないとは思った。ピアノ描写がやたらに長いのだが、そういう方面のことが好きな人にはいいかもしれない。まあ、これは伏線が集結するまでの仕掛けにも影響があるものではあったのだが、文章が映像化されやすい展開なのかもしれないとは思った。
 難点としては、登場する人々が、日常生活を送る上ではちょっと困難になりそうな人格障害の人ばかり出てくることかもしれない。恐らくリアルな社会では、精神科にかかっているだろうレベルの人が次から次へと登場してくる。結局バイオレンスまで発展するが、当然と言えば当然で、これで破綻しない人間関係などは無いだろう。
 そういう中で超人岬という人物が物語をコントロールすることになっていて、かなり漫画的ではあるにせよ、これはシリーズ化するんだろうな、ということも分かるのである。この本は香月家の物語であるにせよ、実際には岬洋介シリーズの布石ともいえる作品ということなのであろう。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする