数人の携帯の警報音が鳴りだして、ちょっと?という沈黙が数秒、そして揺れが始まった。恐らく30秒くらいは続いた。震度3か4という感じはした。しかしその時間はとても長く不快なものだった。
簡単に片づけをして、それぞれ帰ろうということになった。外に出て車に乗る前に、今度は建物が軋むような、それと何かを引っ掻くような音が鳴った。余震のようだ。
熊本が震源らしいという情報は分かった。家人への電話はすぐにはつながらなかった。LINEはOK。ひとまず安心して車を運転していたが、何やら動悸というのだろうか、外の暗闇が恐ろしいような妙な気分に襲われる。子供の頃に合宿で上級生から肝試しをするように言われているような気分。トイレに行くのが怖いような、そんな感じだ。
家に帰ると家人も離れも大丈夫ということで、言葉の上では良かったと安心しようとしているのだけれど、ストーブをつけなければ寒くて仕方がない。しかし余震が断続的に続いていて、ストーブを点けたり消したりしている。手先が冷えて仕方がない。お湯割りを飲んで温まるより無かった。
布団に入ってからも警報音とすぐに少し大きな余震。近所の防災スピーカーも大きな音で地震注意を告げている。寝室は二階で、揺れがやはり大きく感じる。
何とか寝たように思っていたが、余震で断続的に目が覚める。今度は体が熱くて仕方がない。掛け布団を一枚はがし、毛布から手足を出して体温を下げようとする。汗がジワリと噴出してくる感じは不快だ。外気は少しはひやりとしているけれど、熱さはなかなか収まらない。そうして余震はやはり時々ある。熊本は本当に大変だろうな、と、さらに心配になる。
朝新聞を取りに外に出ると、なんとなくふだん通りという感じである。外が明るいのはこんなに救われる気分になるものだ。人間の感情は、自然に左右されるものなのだな、と思う。今日はやっていけるような気分も湧いてきて、吹っ切れたかもしれない。
まだ注意は必要だと思うが、近辺はとりあえず落ち着いたという感じ。僕はまだ子供だな、という恐怖感だった。