カワセミ側溝から(旧続・中岳龍頭望)

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

ちょっと無理だが、その無理を強引に楽しむ   人生はマラソンだ!

2015-12-21 | 映画

人生はマラソンだ!/ディーデリック・コーパル

 オランダ映画。税金滞納しているのに従業員はトランプに高じたりしてやる気が無い。足が不自由なエジプト人(実はこの青年だけがまじめに働いている)を雇うことで補助金をもらっているので、安易に首にもできない。さらに主人公の男はガンにおかされており、余命いくばくか(これは皆には内緒)。酒煙草に浸り打開策が無いような状況下で、あえて全員がマラソン大会に出場し、全員が完走するという条件で、スポンサーから援助してもらうという約束を取り付けるのであった。
 ダメおやじたちが、ダメな中でもがき(最初はあまり真面目ではない。もっとも最後の方まで真面目でない気分は残っているが)、それでも何とか練習をそれなりにやって、実際にマラソン大会に出場してしまうというストーリー。単純だが、このちょっと無理感を覆す快感のようなものを、ストレートに映画にしたという感じ。僕は見たことが無いが、24時間テレビなどで、無謀な長距離を普通の芸能人が走破する疑似ドキュメンタリーのような大衆の興味にマッチしたお話なんだろうと思う。コメディと感動が上手い具合に混ざり合って、オランダというまったくなじみのない映画俳優たちが個性豊かに活躍するのを単純に楽しむことが出来る。親子関係の葛藤や、実は無理して隠している病気の伏線も生きている。どのみちありえない話なので、それなりに何でもアリという感じはするけれど、ダメな人間がいつまでもやっぱりダメな感じと、個人的な事情で葛藤したり障壁が持ち上がったりするサスペンス感もそれなりにまとまって楽しむことが出来る。本国でもそれ以外でもヒットしたというのはよく分かる。挿入されている曲も聞き覚えがあって、この映画のヒットで巷間でも話題になったのではあるまいか。社会的に影響力があったという作品で、日本人の僕らにも伝わりやすいメッセージである。
 まあ、そういう風に楽しむ映画で、オランダらしいのかどうか知らないが、個性的な俳優がそれなりにいるということが分かるのも興味深くはあった。ふだん観ているのはハリウッド作品がどうしても多くなるから、美男美女がまったく出ていない映画というのもかえって新鮮かもしれない。もっとも諸外国の人が日本映画を観てもそのように感じるのかもしれないが…。
 それでもヨーロッパ理想主義と、社会的な病理のようなものもなんとなく見て取れることもある。足の不自由なエジプト人にしても、恐らく移民問題の絡みだろうし、経営者と結託して働かない労働者というのも、労働組合などの絡みが背景にあるのかもしれない。それらは欧州の社会的な病理とはいえるが、あまり真面目に批判するとそれなりに問題があるのかもしれない。皆そういうことはなんとなく困ったものだとは感覚的に感じているはずのことだが、このように映画でコメディとしてあぶりだすことで、それなりに溜飲の下がることがあるのかもしれない。
 映画としては息抜きだが、たまには本当に違った文化の娯楽を楽しむのも悪くないのではないだろうか。
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