カワセミ側溝から(旧続・中岳龍頭望)

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

異常なはずが、それでいいという安堵感へ   福福荘の福ちゃん

2015-12-09 | 映画

福福荘の福ちゃん/藤田容介監督

 お笑いタレントの大島美幸が男役として主演。僕は知らなかったが、それが話題となっていたらしい。坊主頭だし、あんちゃん顔であることは確かだが、声の質はやはり女のものだし、最初はちょっと無理があるかなという感じもあったが、時間の経過とともにそれなりにしっくりしてくる感じだった。
 塗装職人の福ちゃんは、気は優しくて面倒見のいい兄貴カタギの人物のようだ。同じ職人仲間からお見合いめいたおせっかいを焼かれるが、(相手のことを必ずしも悪いとは思っていないようだが)何か事情があり、女性に極端に奥手なのである。その原因と思われる同級生の千穂が、外資系企業の職をなげうってプロの写真家になろうとする渦中で、過去の隠れたトラウマのために上手くいかないことに気づかされる。そうして過去に福ちゃんにしてしまった悪事を詫びに、福ちゃんのアパートまで謝罪に行くのだが…。
 いわゆる一般的に見てまともそうな人が少ない極端な社会を描いているにもかかわらず、何か身近で、むしろ卑近すぎるくらいののんびりした仲間たちの友情などを描いている。特に精神に異常をきたしている人が多く登場するのだが、性格的にも異常性がある人たちが集まってしまうと、それなりに皆が深刻に悩んでいることが素直に笑えてしまうということなのかもしれない。福ちゃんは、本来的に塗装工の男としてはそんなに乱暴な感じではないが、その面倒見の良さが圧倒的に慕われるということになっている。そういうキャラクターに大島が見事にハマるような感覚になると、もうそれだけでこの映画は成功しているということになるんだろう。普通のデブ男がこの役をやったところで、この感覚的な面白さは半減してしまうかもしれない。また他の個性派すぎる俳優たちの演技も、普通ならキモいというような感じでしか映画に使われていないはずなんだが、この劇中においては、実に愛すべき変な人たちとして、ほのぼのと描かれている。可愛らしいがゆえか、その才能が正当に評価されているのかよく分からない千穂の天然ぶりも絡まって、本来的には残酷になりそうな話が、不思議とそれなりの説得力を持つに至っている。いや、まあ、ファンタジーなんではあるが…。
 よく考えなくても変なコメディだが、そういう異常性がまったく気にならない、不思議な温かみのあるドラマに仕上がっているのではなかろうか。
コメント
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