カワセミ側溝から

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

伝説の元になったものとは

2015-12-20 | 感涙記

 アマゾン川の支流にネグロ川というのがある。支流とはいえ大変な大河で、コロンビア、ベネズエラ、ブラジルにまたがり、2,500キロの長さがある。水量は世界第二の水量を誇るコンゴ川を上回る。名前のネグロは、アメリカでは人に向かって使うと面倒だが、黒いという意味で、実際に水の色が茶褐色に濁っている。土壌が酸性で微生物が育ちにくく、魚の種類が約400種と極端に少ない。プランクトンなどの微生物が育たないために、餌としている魚が生きていけないものと考えられる。雨季になると広大な土地である中州などの森が水没してしまう。それらの森の木の葉が水に浸り、落ち葉が堆積し、そうした植物の葉などから染み出したタンニンが水を茶褐色に染めていく。天然の紅茶状態と考えていい。
 普通であれば水につかった木の葉などは、微生物が分解して腐敗する。そうして豊かな土壌を育て、また生き物の栄養としていきわたる。酸性が強いために微生物が極端に少なく、水に浸り堆積した木の葉などは腐ることなくそのままの姿である。長い年月そのように水に浸ることにより、さらにタンニンが抽出されるという循環を巡らせているのだろう。
 それでも魚が暮らせていけるのは、木から落ちてくる実を食べたり、同じく水面に落ちてくる昆虫などを餌にしている為である。もちろん魚以外の生物(ワニなど)も暮らしている。魚の種類自体は少なくとも、豊かな生態系を宿しているのである。
 魚同士での生存競争もある。小さい魚は大きな魚に狙われるのは世の常だ。そのような環境にあって、水面の光の反射に見せかけた色を身に着けたものが多くいるのではないかとも考えられている。いわゆる見事な色彩をもつ熱帯魚の宝庫なのだ。そうして、それらの熱帯魚を人間が捕って、生業を立てている。
 ネグロ川をどんどんさかのぼって、さらに山を登っていくと、山脈はいわゆる平たいテーブル・マウンテンのような形状をしている。その山の峰から水が集まって、ネグロ川の源流となる。そうしてその集まりは急峻な落差のある巨大な滝となって平野に降り注ぐのである。茶褐色だった水はその時に黄金色に輝くことになる。
 エルドラドというのは南米に伝わる黄金伝説であるが、あくまで神話のようなものである。ひょっとするとしかし、その神話の元になっている黄金とは、この滝の水の色のことかもしれない。少なくともジャングルの奥地に分け入ってみることのできた人間にとって、この滝の水は神秘以外の何物でもなかろう。
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