Strawberry shortcakes/魚喃キリコ著(祥伝社)
主に4人の女の群像劇といったところの漫画。主題はズバリ女心といえるだろうが、男の僕が読んだところで分からない訳ではない。いや、漫画だから分かるが、実際の生きている女がこんなことを考えているかは考えたことは無いので、分からなかった心情かもしれない。
塔子とちひろは同棲というか共同生活をしている。塔子はそこそこ売れているイラストレーターで、雑誌の表紙を飾ったりしているが、彼氏にはフラれ、さらに仕事へのプレッシャーが大きく、過食症でそのために吐くような病的なところがある。ちひろはOLでちょっと可愛らしい感じかもしれない。しかしその女性性が強い為か時には同僚にも妬まれ、塔子と比べて特に才能が無いとか、彼氏がいても自分中心にならないことに苛立ちがあったりする。他人と比べないと自分がしあわせになれないタイプの考え方をする人のようだ(要するになんとなく不幸)。この二人は生活が近いせいか、友人でありながら心の中ではお互いに憎み合っている不思議な関係だ。
この二人とはまったく別に、風俗で働きながら(それを武器として割り切って使い、それだけで生きていく強さがありながら)実は強烈に思いを寄せる男とは、単なる友達関係のままという秋代。ペットにヒョロリという魚(金魚なんだろうか?)を飼っている。そうして、この中では一番深刻でないけれど、彼氏もいなくてしかし強烈に彼氏は欲しくて、しかし休みの日には公園でたこ焼きを食べるようなことをしてのんびりしているような里子というのが出てくる。ストーリー的には関係ないようでありながら、これも女のリアルな姿の一形態ということなのかもしれない。
イラストのようなシンプルな線の漫画で、ちょっとした浮遊感のようなものが感じられるのだが、恋に恋している心情や、女性ならではと思われる複雑な心境が見事に描かれているという感じだ。登場人物以外の男は、なんだかどうにも冷たい感じだが、女から見た男という生き物は、こんな感じなのかもな、とは思った。そういうものを女たちは激しく欲している訳で、男の僕から見ると、少し不可解だ。自分の性は使っているものの、やはりそういう欲求ということは薄いからかもしれない。まったくそれでどうして男が欲しいのだろう?それが本能的な感性なんだろうか。
特に重たいのはちひろで、これは一番男にモテるだろう可愛い女でありながら、自ら不幸な考え方で、破滅してしまう感じだ。そういうどうしようもなさと、同居している塔子を同時に傷つけていく残酷さが(そうして自分も傷つくが)、何ともやりきれない感じがした。ひょっとすると身の回りにもいたかもしれない人物で、他の病的な二人とは少し違って普通っぽいからこそ、救われないような気分になった。相手に何かも求める人生とは、やっぱり不幸の始まりなんではなかろうか。もしも男が万能のいい奴であっても、自ら不幸の種を探し出して泣いてしまうのだろう。