オーストラリアにオールドワイフ(Old wife)という名前の魚がいる。エンゼルフィッシュ(考えてみるとこの名前も変だけど)が胴長になったような縞模様のある魚である。豪州の固有種だという。名前のニュアンスは、古女房というより老婆という意味に近いといわれる。なんでも釣り上げると、ギーギー、ギシギシ鳴くためで、老婆が歯ぎしりをしたり小言を言うような感じがするかららしい。なんとなく老婆にもこの魚にも失礼な感じがするが、豪州人がそう思ったのなら仕方がないことだ。
魚は種類が多いというのはあるだろうが、時折変な名前のものに出くわす。いや、厳密には名前を付けた人間が悪いはずだが、海の生物の多様性もあってのことか、妙な形姿の魚がいるせいであるようだ。
見た目がそんな感じのコンペイトウというぶつぶつの多い魚がいる。ググってみて欲しいが、なかなかかわいい。
タツノオトシゴは十分変な魚だが、これに似たものにタツノイトコやタツノハトコがいる。どちらもタツノオトシゴに似ているだけでなく、海藻などに擬態して見つけにくいという。
スベスベカスベというエイの仲間もいる。鱗がほとんどなくて本当にすべすべしているらしい。
見た感じはムツゴロウに似ていて岩場に住むヨダレカケというのもいる。この魚はほとんど岩の上の陸地で生活しているらしい。下あごにあるよだれ掛けのような半円形のひだと上あごを吸盤のようにして岩にくっ付いて藻など食べているらしい。えら呼吸もするが皮膚呼吸もすることで、陸上生活が可能になっているようだ。酸素を効率よく使えるのであろう。
顔の前面に長いひげがある風貌のためにオジサンという名のヒメジ科の魚もいる。メスだってオジサンである。美味で珍重されるというから、ひょっとしたら食ったことがあるかもしれない。でもオジサンという名で食材が並んでいるのは見たことが無いので、普通に煮魚とかでしれっと食事に出されているのかもしれない。
カサゴの種類としては大きくもなり、これもやはり美味で食材として人気のあるウッカリカサゴというのもいる。学者の阿部宗明が新種としてこの名前を提唱したとされるが、その理由は他でもなく、別種であるにも関わらず似すぎている為にほとんどカサゴと区別されることないため、「うっかり」分類されないカサゴとしてあえて命名したそうだ。どのみち食われるにせよ、うっかりカサゴのまま食われるのはしのびないということなんだろうか。ウッカリカサゴ・ブランドとしてしっかりと認知された方が、高級魚として市場の価値が上がるのかもしれない。