カワセミ側溝から(旧続・中岳龍頭望)

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

シュールだけど何となく本当そうな   ウホッホ探検隊

2012-12-10 | 映画

ウホッホ探検隊/根岸吉太郎監督

 夫婦の離婚劇という題材で、何故か不思議と味のあるコメディに仕上がっているという変な作品。変ではあるが非凡なホームドラマで、興行的にはコケてしまったが、本当に面白いという魅力のある佳作である。
 何となく現実感が希薄そうに見えて、しかし子供たちの葛藤や、何の非も無く夫に裏切られた妻の葛藤も見事に描いている。ある意味で家庭を崩壊させながら罪の意識の薄い浮気夫も、軽薄では無く素直なまま演じられていて、この中では一番シュールながら、なかなか興味深い存在だった。そうして最後まで何故か悪人なのではない。
 単身赴任の寂しさから愛人が出来てしまった事に、何故か男は最初から大きな罪悪感をもっている様子がない。その説明も兼ねてという意味なのか、赴任先に妻を呼び、つきあっている女性と会わせて話し合いを試みようとする(実際にそうなる)。これは絶対あり得ない話ではないのかもしれないが、そんなことをされても、誰もが困るだけなのではなかろうか。話し合えば理解しあえるという考えを持っている様子もあって、さらにそういう態度に困惑させられる。演じているのが田中邦衛で、息子からもカッコよく優しい父親として慕われているようである。そのキャラクターは何となくやはり違和感があって、考えていることがぜんぜんわからない訳ではないが、しかし一人の人間として、どこか何かを超越しているような感じもあるようなのだった。自分が選択してこのような状態になったのではなく、単に自然の流れとして抗うことなくこうなったのだ、ということなのだろう。
 もちろんこれで困るのは妻の方である。怒りもあるが、自分の生活を見直してみたりして、また息子たちの反応も気になるところだ。仕事の上でも、仕事とは別の男女のもつれの渦中に図らずも巻き込まれたりしてしまう。
 結局悩んだ末に離婚を選択するのだが、決断すると役場はあっさり受理しておしまい。むしろ男たちにはモテ出すし、息子たちは彼らなりに協力的なのである。
 こういう話というのは、ある程度の泥仕合が相場のようだけど、そうなりそうな感じになりながらも、かろうじて免れている。映画の印象も、そのために明るめのトーンを維持できて、なおかつシュールなのだろう。題名も変だし、理由は早くに明かされるが、そんなんで納得できる感じでもない。そうではあるのだけど、会話は面白いし、巻き込まれる状況も、何故だか楽しい。考えれば考えるほど型破りな形でありながら、不思議なリアルがあるものである。むしろこのような離婚劇があって、人々のつながりが確認されていく事がよく分かるのである。もちろんこのお話をどのように捉えるのかというのは、観る者にとって違いがあっていいという選択も可能になっている。僕としては明るい将来を暗示しているように思えたが、単にそれは僕の希望ということかもしれないのだった。
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