馬医者修行日記

サラブレッド生産地の大動物獣医師の日々

馬は裸足が一番

2013-01-08 | 蹄病学

何度かこのブログで書いてきたが、

馬は蹄鉄を履いていた方が良いというのは間違えている。

馬は本来、跣蹄(はだし)の動物だ。

人が使役に使うとどうしても蹄が磨耗しすぎるので、蹄鉄を打つようになった。

しかし、装蹄にはデメリットが付きまとう。

蹄が広がったり閉じたりする蹄機を妨げる。

釘で装蹄すれば蹄鉄の上で蹄は蹄機作用できるが、それでも蹄機は制限される。

そして、釘の穴は蹄にダメージを与える。

蹄鉄を接着すれば釘を使わずに済むが、蹄は蹄鉄に完全に固定されるので、蹄機は期待できなくなる。

装蹄すれば蹄は磨耗しなくなる。

(これが装蹄する目的であり、最も大きなメリットであり、そして最も大きなデメリットでもあるのだろう)

改装時に元の蹄形に戻せれば良いが、蹄尖部は伸び、蹄踵部は荷重によりつぶれがちだ。

装蹄した馬ばかり観ている人は、蹄鉄や蹄負面が負重する部位だと誤解しがちだが、

本来、馬の蹄の構造でもっとも荷重がかかるのは蹄踵部だ。

装蹄している馬では、往々にしてその蹄叉や蹄支や蹄球など蹄踵構造がおろそかにされ、壊れてしまっている。

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別に「装蹄」師さんに喧嘩を売るつもりはない。

装蹄などしない方が良いなどと言うつもりもない。

しかし、鉄打ってナンボ。というだけの仕事にとどまるのか、

馬の蹄の技術者、さらには科学者としての専門家となるのか、

そのあたりの理解が境目なんじゃないかと思う。

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馬が蹄に問題を抱えているとき、

除鉄(蹄鉄をはずして)問題の改善を図ったほうがうまく行くことが多い。

競走馬の多くも蹄に問題を抱えている。

休養期間中くらい蹄鉄をはずして、蹄形を改善する機会にした方が良い。

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ただし、跣(はだし)にして放っておけば良いわけではない。

装蹄しておく以上に、こまめな蹄の手入れが必要だ。

そうやっても、蹄形が改善されるにはかなりの時間が必要とされる。

それくらい競走馬(装蹄してある馬)の蹄は崩れてしまっている。

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敬愛するIshihara先生のブログの記事を紹介しておこう。

ハダシは蹄の健康に良い?

オーストラリア獣医師会雑誌か・・・講読していないので読めないがたいへん興味深い内容だ。

壊れた蹄形を跣蹄にすることでどうやって回復させるかのヒント(明快な答え?)も含まれている。

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P2010054 青木先生に見せてもらったアメリカ野良馬(ムスタング)の蹄の模型。

蹄叉は貧弱だが、蹄踵部はとてもよく発達し、頑丈な蹄支をしている。

        -P1170011

獣医師にして蹄病の第一人者Scott Morrisonを迎えての装蹄師さんたちの勉強会で問題提起のために右の写真を見せたことがある。

Scott Morrisonは「悪くない」と言ったが、

「何も手入れしていない蹄じゃないか」との意見もあった。

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さて・・・・・

先は長いな(笑)。

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