馬医者修行日記

サラブレッド生産地の大動物獣医師の日々

馬の馴致 体重計、枠場、馬運車

2012-07-15 | 動物行動・心理学

 私が日常で経験する馬の扱いのいくつかのこと。P7132521

  まず体重計に載せるとき、これは現役競走馬はさすがに慣れている。

体重計は馬が載るとわずかにゆらゆら揺れる。

載ったことがない1歳馬などは載りそうになっても降りてしまう。

 枠場に入れる場合はそれも1つの関門になる。

若い馬では素直に入る馬は少ない。

枠場に入ってから暴れられても困るので、たいていは鎮静剤をうってから押し込むことになる。

喉の検査などでは鎮静剤で喉の動きが抑制されてしまうので、鎮静しないで枠場へ入れたい。

これもゲート練習をしている馬や現役競走馬は馴致されているが、1歳馬でも競走馬でもどうしても枠場に入らない馬も居る。

(その場合は枠場にいれないで、枠場の扉を使って内視鏡を壊されないように気をつけながら検査することにしている)

 手術が終わって、馬運車に積むときも載らない馬が居る。

ムチで後から追ってみたり、後ろ向きに押し込んだり、平うち縄で引っ張り込んだり、あの手この手で載せている。

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 本当は馬が扱っている人をリーダーだと認めていると、その人の指示に従い、その人について歩くものなのだと最近は説明されている。

そのリーダーのことをαアルファと呼ぶのだそうだ。

あんまりそんなことを考えて馬を扱ったことはない。という牧場の人も多いだろう。

しかし、馬はちゃんと人を見分けている。

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 ときどき飼い主さんに病状やX線像などを説明しなければいけなくて、大人しそうな馬だからとわれわれの誰かが引き綱を預かって飼い主さんがその場を離れることがある。

そのとき大人しかった馬が突然そわそわ暴れ出すことがある。

馬はいつも世話してくれる飼い主を認識していて、その人がそばにいるから不安に耐えているのだ。

これはいつも牧場で同じ人だけで馬を扱っていると気づきにくいことかもしれない。

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 私たち獣医師も、私が獣医科学生だっところは動物の行動や心理についてなどは習わなかった。

今は動物行動学とか動物心理学を課目として習ったり、専門の先生が居たりするようだ。

獣医師は動物に関するあらゆる分野に長けていなければならないのかもしれないが、今でも動物の扱いそのものは獣医師以上のプロが居て信頼されている。

犬のトレーナーや訓練士もそうだし、馬についても行動を専門にしようとしている人も居るようだ。

ただ、本当に問題行動がひどくて投薬が必要だったり、自傷行為などで治療が必要だったり、特別な検査が必要だったりすると獣医師の協力が要るようになる。

精神科や心療内科が医師の守備範疇であるように、獣医師も動物行動学や動物心理学を勉強しておくことが望まれているのかもしれない。

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あんたはなんで噛むの!?