昨年のAAEPで、テキサスの Weems and Stephens Equine Hospital のDr.Janicekが、整形外科的緊急時にいかにして肢を固定するかを講演している。
骨折、脱臼、腱や靭帯の完全断裂などのときには、すぐに、正しく固定処置をしないと助かる馬も助からなくなってしまう。
なにせ馬は折れた肢で立ち上がろうとし、痛い肢でも振り回し、たちまち開放骨折になって汚染し、二次的に周囲の筋肉や血管まで傷つける。
正しい応急処置を知っておいてもらって、それなりの材料を用意しておくか、その辺にある材木や塩ビ管やガムテープを使ってでも固定して、手術ができるところへ運んでもらえば、助かる馬も増えるかもしれない。
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前肢でも後肢でも1の部位、つまり球節を含めて、それより遠位ではハーフリムキャ ストで応急処置できる。
ただし、この応急処置の場合でも中手骨あるいは中足骨と指骨(趾骨)が直線状になるように固定する。
蹄尖まで覆うと荷重を損傷部より近位へ逃がすことができる。
後肢ならこんな感じ(右)。
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前肢なら橈骨の遠位部から、後肢なら飛節の下からはセクション2。
ハーフリムでは役不足。
前肢なら肘から下を固定する必要がある。
後肢は飛節より遠位の場合に右のような応急処置をする。
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橈骨が折れたり、後肢では脛骨や飛節が折れたら(セクション3)、橈骨部や脛骨からの固定では不十分で、骨折部から遠位が外へ開いてしまう可能性がある。
そこで、左や右のような長~い添え木が必要になる。
こんなものを用意しておくわけにはいかないので、そこら辺にあるものを利用することになるのだろう。
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上腕骨が折れると応急処置といってもできることはほとんどないのだが、肢を少しでも負重できるようにしてやるためには、腕節を後から支えるように添え木を入れて肘から球節までを固定する。
こうすることで、馬は腕節を延ばして多少は負重できる(かもしれない?)
後肢で大腿骨を骨折した場合はできることはない。
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これらの方法はあくまで応急処置。
骨折やその他の損傷がひどくなるためのもので、このような固定をしておいて、詳しい診断や手術ができる所へできるだけ早く運ぶ必要がある。
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正しく応急処置をして手術できる場所へ運べば、助けられる骨折馬はもっと増えると考えている。
数年前にAAEPでNunamaker先生が特別講演をされたのだが、その中で
「もう馬の骨折を治せるかどうかは技術的な問題ではなくなっている。経済的な問題にすぎない。」
と述べておられた。
これは、チョッと言いすぎかな?とは思うが、馬が骨折したら予後不良。というのはもはや短絡的過ぎる。
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きのうは1歳馬の裂歯からの歯槽骨膜炎の掻爬手術、2歳馬の喉の内視鏡検査が2頭、競走馬の種子骨骨折の関節鏡手術、NICUに入院が2頭。JRAから見学者がお二人。