ゆうべの難産、1頭目は下胎向。
仔馬の背中が下を向いている。すなわち仰向けになっているのをこう表現する。
そのまま引っ張り出すと、しばしば産道の背側を穿孔する。
ゆうべの仔馬はまだ生きていたので、すぐ側胎向になった。
これは枠場での仕事。
生まれた子馬に気管挿管し、デマンドバルブで酸素吸入する実習生のF君(右)。
妙に様になっている(笑)。
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そのあとの難産2頭目は、横胎向、前肢2本が産道に入ってきていた。
左の図のようだと後肢を押し戻して前肢から出せるだろう。
しかし、ゆうべの馬は頭が触れなかった。後肢も飛節をやっと触れるだけ。
中足骨にチェーンをかけて引っ張ってもらい、近づいてきた繋にチェーンをかけ直す。
繋のチェーンで両後肢を引っ張り出したら、前肢を押し込んで尾位(右)にして娩出させた。
仔馬の頭は湾曲していて奇形だった。胎盤も剥がれてしまっていた。
仔馬が早くに死んだので、子宮の収縮に押し出されるだけになり、ひどい失位になったのだろう。
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明け方、3頭目の難産。頭だけ陰部から出ている。手を入れようにも怒責が強くて頭を押し戻せない。
頭位、両前肢腕節屈曲(左図は左前肢腕節屈曲)。
すぐ全身麻酔して後肢を吊り上げる。子宮弛緩剤を静脈注射する。
頭を押し戻しておいて、腕節を屈曲している両前肢をそれぞれ引っ張り出した。
あとは引っ張り出すだけ。
仔馬「ごめんどうをおかけしました」(右)
F君「まあ、いいってことよ。ガハハハ」
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仔馬が生きている難産は本当の急患だ。数分を争う。
失位を直して両前肢と頭からか、両後肢で尾位からかでないと、絶対に出ない。
失位を直すコツは押し戻すこと、チェーンを上手に使うこと、そして産道が腫れあがったり滑らかさが無くなる前に娩出させることだ。
怒責が強くて押し戻せないないなら全身麻酔して後肢を吊り上げる方法がある。
トラクターを使えば野外でもできる(右下)。
いずれにしても、動ける人数を集めることと、早めの決断をすることだ。