馬医者修行日記

サラブレッド生産地の大動物獣医師の日々

中足(手)骨内側関節面からの縦骨折

2008-03-18 | 整形外科

Mt3medfx 中手骨・中足骨の縦骨折で多いのは、外側関節面からの骨折。

しかし、内側関節面から縦骨折することもある。

内側関節面からの縦骨折はたいへん危険で、骨折線は遠位部で内側へ開いてしまわず、近位方向へしばらくは真っ直ぐ、骨幹中央部では螺旋状に伸びていく。

骨幹中央あたりでの斜骨折になることもあるし、もっと近位で横骨折することもある。

内側関節面からの骨折は中手骨より中足骨の方が多いようだ。

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 内外対称に見える中手骨・中足骨だが、解剖でよく見ると内側関節面の方が広い。

実際には肢の荷重は内側関節面にかかっているのだろうと考えてきたが、真偽のほどはわからない。

いずれにしても、内側関節面からの骨折は致命的な骨折につながりかねないので、悪化しないうちにスクリュー固定する必要がある。

骨折線が伸びて螺旋骨折になり始めていたら、全身麻酔して手術するかどうか慎重に判断する必要がある。

麻酔覚醒時に斜骨折や横骨折する危険が非常に高い。

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P3140002 左後肢の中足骨内側関節面からの縦骨折。P3140001

キャスト固定していたらしいが、ある日骨幹ほぼ中央で斜骨折してしまったそうだ。

前(背側)から見たのが左。

後(足底側)から見たのが右。

背側の骨折線は近位内よりへ伸び(左)、

足底側の骨折線は近位外よりへ伸びている(右)。

そしてそこでくるりと回って斜骨折した。

(スクリューは骨標本にしてから練習のために挿入したもの)

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P3140003 これは右後肢の中足骨内側関節面からの縦骨折。

競馬場で発症して、痛みがひどくて輸送できず、数週間経って帰ってきた。

骨折線はもう近位へ伸びていたがスクリュー固定を試みた。

しかし、麻酔覚醒時に近位骨幹で横骨折した。

もし内固定するなら中足骨全長におよぶプレートを入れるべきだった(写真のプレートは骨標本にしてから装着したが短すぎる)。

骨折線は内側関節面からまっすぐ近位へと伸び、皮質が厚くなる骨幹中央で螺旋状に回り始めている。

P3140004 足底側の骨折線は近位外側へ伸びている。P3140005

骨折線周辺にはかなり骨増勢しているのがわかる。

横骨折した部位にもすでに骨増勢があったのがわかる。

今にして思えば、プレートを入れる手術をして、吊起帯を使って覚醒させるとか、

フルリムキャスト(膝したまで覆うキャスト)をするとかするべきだったかもしれない。

 手術しないで安静にする選択もあったかもしれないが、この症例はたぶん横骨折してしまっただろう。

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 これらの経験から中足骨・中手骨の内側関節面からの縦骨折は、

骨折線が螺旋状になる前にしっかり骨端でスクリュー固定する(スクリューは遠位では内から外へ、近位へ行くほど内後から外前気味に)。

螺旋骨折が始まっていたら、しっかりキャスト固定して安静にするか、プレート固定手術する。

と考えている。

 内側関節面からの骨折は、外側関節面からの骨折に比べて痛みも強い。

しかし、蹄まで覆うキャストをして、できるだけ早く手術できるところへ運ぶべきだろう。

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今日は、午前中2歳馬の球節の骨片骨折の関節鏡手術。

私は、午後は家畜保健所の事業報告会。

早産の仔馬の入院が1頭。