以前にも書いたのだが、球節が沈下してしまう馬がいる。後肢だと直飛(飛節が真っ直ぐに近く伸びてしまう)にも なってくる。
繋靭帯を中心とする懸垂機構の破綻。などと表現されていたり、繋靭帯が伸びているとか、前方脚が切れていたとか、浅屈腱が弱いのではないかとか、言われたり書かれたりしていることがある。
そうなる要因としても、高齢馬に多いとか、競馬で走った馬ほどそうなるとか、聞いたことがある。
この障害について、DSLD ; Degenerative Suspensory Ligament Desmitis (退行性繋靭帯炎)という概念を提唱しているグループがある。http://www.dsldequine.info/
そのグループは近年は、この障害を ESPA ; Equine Systemic Proteoglycan Accumulation (馬全身性プロテオグリカン蓄積症)とも呼ぼうとしている。
http://people.delphiforums.com/RZECH/dsldvet/index.htm
後肢だけではない。前肢に起こることもある(右)。
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実際の症例を見たことがある人には、「ああ、あの馬はそういう病気だったのか」と思い当たるかもしれない。
球節が腫れあがる。
球節が沈下する。
中には皮膚が異常に弛緩してる馬がいる(右)。
その他にも症状はさまざまだ。
診断方法としても、いくつか挙げられているが、
1.肢を触って痛みを診る
2.馬を自由に歩かせているときに跛行を観察する
3.屈曲試験をする
4.超音波画像診断でコア病変、断裂、太さの違いを調べ、計測する
が、どれも確定診断とは言えない。
最後は剖検して切除した病変を組織学的検査することだ(日本の病理の先生はこの病気を知っているだろうか?)。
遺伝子検査も考えられており、今、もっとも研究の焦点が当てられている部分だ(まだ確立されていないということ)。
末梢血でマグネシウムが低くなるとか、鉄代謝の異常でフェリチンが異常値になるともされているが、くわしいことはわからない。
遺伝病だと考えられるので、このような馬は繁殖に供用しないように。とも言われている。しかし、血統と競走成績がすべてのサラブレッドの世界ではそのようなことは不可能だろう。
http://www.youtube.com/watch?v=7YXTxvTEJFo
生前診断法、病理学的検査所見、臨床病理検査法、発生要因、遺伝子診断法、その他、この病気について詳しい人がいたら情報を下さい。
乗馬でこういう馬をみたことがあります。
患畜としてではなく、試合に来ていたので、洗い場につながれているのを見ただけですが、後肢の球節はまさにこの通り、前足は駐立時も両方とも前に出して踏ん張ったような立ち方で、写真より球節の沈下はひどく、なにかのひょうしに地面につきそうに見えました。
よくこれで障害とぶなあ、と思いました(口には出さず)。
年は20才よりは若かったと思います、たしか去勢馬だったような(記憶あいまいですみません)
オーナーさんは生まれつきこういう馬だから、と気にされていない様子でしたが、踏ん張ったような立ち方が苦しそうに見えました(慣れない場所に来て緊張していたせいもあるかもしれませんが。)
ぼんやりと骨格の異常(繋骨が長過ぎるとか)かと思っていましたが、全身性の病気だったのでしょうか。興味深いです。
情報ありがとうございます。生産地ではこういう馬はかなりいます。歳がいくほど多く、また悪化するのですが、比較的若い馬にもいます。
たしかに片肢だけということはなくて、ほとんどの場合両後肢です。四肢ともという場合もあります。
治療方法はないのかと考えてきましたが、もし本当に全身的な病気なのだとしたら、あとは外科的には球節の固定術しかないのかもしれません。
ただ乗ると、この球節がクッションになるようで、乗り心地はよかったです。この馬はちょっと重が入っているようないわゆる雑種で、色はアパルーサー様。歳は9歳で、若い頃からこの球節と聞きました。皮膚が非常に悪くて尾の毛はないし身体も脱毛が見られました(虫に弱く掻き毟っていたからかも)
この馬に似た容姿、症状の馬も何度か見かけました。そのうちの何頭かは同じ地域の産まれです。
ちなみにこの馬たちはみんな5~10歳くらいの馬たちで、どの馬も辛そうな立ち方はしていませんでした。
その後はどの馬も知らないのですが、年齢と共に悪くなっているのかもしれませんね。
乗馬でもけっこういるんですね。サラブレッドより発生頻度が多い種類があるようです。DSLDの馬は運動させてはいけない。ということも書かれていたように思います。
繁殖雌馬でも年とともに球節が沈下してきて、肢が痛くなってついに・・・・というのが一つのパターンのようです。
こういう球節だと、navicular diseaseになりやすいかもしれない、と昨日バイオメカニクス洗礼を受けて思いました…「深屈腱は蹄関節に対して伸筋的に働く」!
洗い場で見た馬が踏ん張っている立ち方に見えたのは、両前navicular diseaseだったの…か?(あてずっぽうです!)
DSLDの馬は蹄角度は寝ないようです。navicularに良くないのは蹄角度の寝た蹄でしょうね。
生産地ではnavicularはまず見ないので、詳しくありませんが・・・・・・