私は5日が仕事初め。
2日前から胃液逆流が続いている10歳の繁殖牝馬が入院していると言う。
それは開けなきゃダメだよね。
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開腹したら腹部正中がなんだかヘン。
皮膚には縫合痕はわからなかったのだが、開腹手術歴があるようだ。
腹側結腸が正中に癒着している・・・・結腸固定術 colopexy か?
ガスと液の小腸内容を盲腸へ送ろうとするが、回腸が何かをくぐっていて内容を送りにくい。
正中に固定された結腸を、腹壁の一部ごと切除するようにして外した。
それで結腸、盲腸、小腸の位置関係を確認することができた。
腹腔の右側は妊娠子宮で占められており、消化管全体は左側へ押しやられている。
小腸は大きなループで腸間膜を軸にして捻れたようになっていた。
絞扼はされていないし、緊張もない。
妊娠末期でなければ、また、colopexyされていなければ起きなかった閉塞のように思う。
妊娠子宮は、妊娠末期には腹腔の尾側腹側を占める。
開腹手術創に結腸を固定すると、大結腸は妊娠子宮に干渉され、圧迫を受ける。
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この馬の大結腸骨盤曲には切開した痕があった。
間違いない。以前に結腸捻転の手術を受けたのだ。
しかし今回も colopexyしておかないと、生き延びても今度は結腸捻転が再発する確率大。
大結腸胸骨曲を、胸骨近くに固定する私の方法でcolopexyし直すことにした。
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その夜、この繁殖牝馬は流産してしまった。
麻酔覚醒起立後に、陰部にピンクの粘液栓が着いていたので,危ないかな、と思っていた。
胎仔は角膜が白くなっていたそうだ。
疝痛の早い時期に死んでいたのだろう。
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この日は、他には種子骨軸外部骨折と繋靱帯炎の明け2歳馬の骨片摘出手術。
競走馬の、もう2ヶ月近くなるフレグモーネの診察。
翌日は、競走馬の第三手根骨の矢状方向盤状骨折のscrew固定。
眼球摘出馬の義眼再挿入。
1月に雨が降った。
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先日は、見慣れないお客さまだった。
シメのメス?
北海道で繁殖しても、冬には南へ渡ることになっているのだけど・・・
胎児が大きくなってから発症し、胎児は死に至る。恐ろしい新たな疾患の様相ですね。
人の介入によるものの可能性。なんですね。
翼の白っぽいところがつながって見えるからオス?はて?
シメハ一年中見慣れていても雌雄はさっぱり。北海道でも越冬する地域があるようですよ。冬鳥の観察楽しいですね。今シーズンはまだ白鳥さえ見てませんけど。
胎仔が死んでしまったのはかえって珍しいことです。colopexyによる疝痛ゆえ、というよりもう3日目の疝痛でしたし、何か固有の問題が起こってしまったのだと思います。胎盤も傷んでいたそうです。
この辺りはバードウォッチングにも良い場所です。河口の樹にはオオワシが停まっています。デカくて迫力あります。
初コメントで恐縮なのですが何点か質問があります。
・経鼻カテーテルで胃液の逆流を確認するときに胃内に水を1リットル程度入れてからのほうが良いと言っている方がいました。
胃内に胃液等が貯留していればサイフォンの原理で何もしなくても逆流してくると思うのですが(今までもそうでした)、最初に水を入れる必要性はあるのでしょうか。
・先日疝痛で経鼻カテーテル挿入時に悪臭のする暗赤色液が逆流してきました。
腸管の絞扼等によって異常発酵を起こした腸液(厳密にいうと胃液と腸液が混合したもの?)が逆流してきたのかとその場では思いましたが逆流液の性状で予後の評価基準になり得るのでしょうか(逆流液の色、匂い等)。
水を入れるのは単純には逆流がないときです。これは、チューブの先の位置が胃の中で動くように出し入れしながら、水を数百ccずつ入れたり出したりしていると、液状の内容や粥状の内容の逆流が得られることがあります。
チューブを入れただけでは逆流しなかったのに、水を入れて、出して、を繰り返しているうちに数リットル以上の逆流が得られることはよくあります。
乾燥気味の固形にちかい胃内容が水で溶けたのだな、という逆流液が得られることもよくあります。
逆流液の性状から、胃拡張の状態が推察できることもあります。胃酸臭がある透明感があり、黄色~緑がかった液だと食べた物を含まない胃液ですし、赤いのは胃拡張や胃潰瘍による出血、茶色いのは十二指腸からの逆流、そして逆流や膨満があるほどpHは高くなっていると思います。
予後の評価につなげるためには他の検査所見との組み合わせと病態評価が必要です。
〇リットルの水を入れてからと慣習化するのではなく馬の状態を診ながらやっていくことが大切ですよね。
逆流液の性状等についても教えていただきましてありがとうございます。色調やpHについてはわからないことが多かったので今後の診療に役立てていきたいと思います。
大人しい馬だと鎮静投与して、鼻ネジして、とやらなくてもできることも多いです。