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馬医者残日録

サラブレッド生産地の元大動物獣医師の日々

ADAFは定着するか?

2011-06-11 | 呼吸器外科

P6200686ADAF axial deviation of aryepiglottic fold ; 披裂喉頭蓋ヒダの軸側逸脱の文献。

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52頭の競走馬での披裂喉頭蓋軸側逸脱の臨床的経験

King DS, Tulleners E, Martin BB Jr, Parente EJ, Boston R

                 Vet Surg. 2001, 30(2) 151-60

目的

 ADAFを示した52頭の競走馬の臨床所見を記載し、これらの馬のうち33頭の休養後あるいは内視鏡下レーザーによる披裂喉頭蓋ヒダ切除後の結果を報告すること。

研究のデザイン

 回顧的調査

症例の構成

 競走成績不良で高速トレッドミル検査された競走馬

方法

 診療記録と安静時と運動時の内視鏡検査のヴィデオを調査した。ADAFが有り、他の上部気道障害がない33頭の馬の外科処置と休養後の結果を、少なくとも1年以上の競走成績と馬主と調教師への質問を用いて比較した。

結果

 ADAFは成績不振で検査された馬の6%に認められた。種類、性別、などには関係しなかったが、ADAFがある馬は高速トレッドミルで検査されたほかの全体の中で若い傾向にあった。ADAF馬52頭のうち19頭は少なくとも1つの他の上部気道障害を持っていた。ADAFと他の動的上部気道障害の間に明らかな関係は認めなかった。外科的処置は立位あるいは麻酔下で併発症無しに行うことができた。ADAFだけが上部気道の障害であった症例では、手術を受けた75%の馬と、休養した馬の50%の馬が客観的に成績が改善した。馬主と調教師は、手術を受けた馬において成績のより大きな改善を認めた。

結論

 ADAFの外科的治療が推奨される一方、臨床的経験によりすべての馬でADAFを改善するために手術が必要とされるわけではないことが示唆された。しかし、手術を受けた馬の馬主と調教師は保存的に治療された馬以上に結果に満足した。

臨床的関連

 ADAFの診断は高速運動中のヴィデオスコープ検査によってのみ可能である。内視鏡下でのレーザーによる披裂喉頭蓋ヒダの虚脱する部分の切除は立位の馬で安全に行うことができ、気道閉塞は改善され、早期に調教に復帰できる。

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P6101144内視鏡下でレーザー手術を行うには、ダイオードレーザーに対応したヴィデオスコープが不可欠だ。

最近のヴィデオスコープはダイオードレーザーの波長に合わせたフィルターが入っていて、レーザーを出力中もハレーションを起こさない。

このフィルターが入っていないスコープだと、レーザーを出力すると、画面が真っ白になって何も見えなくなってしまう。

内視鏡を挿入する人、内視鏡とレーザーファイバーを操作する人、鉗子を操作する人、3人の技術とチームワークが大切。

3人が操作しやすい位置にヴィデオスコープのモニター画面を置いた方が良い。

そして、馬が大人しく、よろめかない程度にしっかり鎮静されていることが必要。

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もう馬関係者にDDSPという用語が定着したように、ADAFという用語が定着するだろうか?

運動中の喉頭内視鏡検査、そしてレーザー手術が普及していかないと、6%の馬は救われない。

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