slab fracture 厚い板状に骨が剥がれてしまう骨折をいう。「板状骨折」と書く人もいるが、「厚い」板という点では「盤状」かなと思う。
治療するならスクリューで固定しなければならない。
剥離骨折 chip fracture だと思われて連れてこられることがあるが、やはり剥離骨折より腫れもひどく、痛みも強いことが多い。
AO式馬の骨折治療の教科書の表紙の絵もこの骨折の内固定手技だ(左)。
関節鏡とスクリューの両方を使う手術なので、現在の馬の整形外科の教科書にはふさわしいのかもしれない。
関節鏡で関節腔内を見ると第三手根骨が割れているのが見える。
骨折線のあたりで浮いてしまっている軟骨や骨片があったら摘出してしまう。
第三手根骨と第三中手骨の間の動かない関節腔にも注射針を刺す。
x線撮影して針が狙った位置に入っていることを確認する。
すると3本の注射針の真ん中がスクリューを入れるべき位置だということになる。
圧迫スクリューになるようにスクリューを入れて固定する。
剥離骨折で骨片を摘出した馬より、ずっと長い休養期間が必要だ。
競走復帰率、競走復帰後の成績も剥離骨折と同じようには行かない。
しかし、第三手根骨の盤状骨折のスクリュー固定と長い休養後に3連勝した馬もいる。
盤状骨折が起きたら、それと診断して、できるだけ早くスクリュー固定するのが望ましい。
治療するならの話だが・・・・・・
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何年か前に第三手根骨盤状骨折した競走馬の予後について調査した。
結果をまとめると
・競走復帰率は約50%。
・ずれてないからといって温存したり、
ずれてしまっているからといって骨片を摘出した馬は予後が良くなかった。
・復帰後の競走成績は実にさまざま。
手術後の成績を数字で示すのは非常に難しい。
中央競馬で入着するものの勝てなかった馬が、手術後地方競馬で走って何勝かしたとする。
無事に競走を続けるという点ではたいへん良い結果なのだが、それを獲得賞金で示すと、手術前ほど活躍していないことになってしまう。
一方、中央競馬の賞金は天文学的な(ちょっとオーヴァーか?;笑)ので、重賞を勝った馬が含まれると他の馬の少々の活躍は、統計処理する上でどうでも良くなってしまう。
単純な数学的平均を出すのではなく、対数平均を使うなどしなければいけないのだろう。
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今日は仔馬の肋間の膿瘍切開。
夜間放牧している仔馬の外傷。
1歳馬の寛跛行の診断・・・だったが白線病からの化膿だった。
夜、繁殖雌馬の疝痛。変位疝ではなかった。
競走復帰の評価は個体の能力を無視することができないでしょうから、事故前後の対比を取るというのが良いのではないでしょうか。
それでも天文学的な賞金では難しいでしょうから、グレードと着順の積の逆数をスコアにするのはどうでしょう。
例JpnⅢ3着=1/3x3=0.11
さらに国際グレードには無条件に1を足すですとか、出走するだけでもとりあえず復帰ですから0.01ぐらいの重みづけをするですとか頭でだけならいくらでも考えられます(笑)
運動面だけではない競走能力の評価方法も存在すべきですね。
割れた骨片が大きいので、取ってしまうわけにはいかない。だからスクリューで止めて、くっつくのを待つ。ただし、関節内の骨折なので骨癒合するには時間がかかる。ということです。
競馬の着順や賞金を使って、手術結果についての客観的なデータを出すのはたいへん難しいと思っています。まあ、全然だめなのに好結果だと示すことはできませんけど。
いつも勉強になります。
特に骨膜から浮いてしまった側の骨片は血行など厳しいという事でしょうか。
なぜかこちらは梅雨模様です。
地震も結局近辺に大きな被害はありませんでした。
遅れましたがご心配いただきましてありがとうございました。
骨膜からの血行の回復は乏しいでしょうね。四角い骨片の4辺のうち2辺は関節面ですから。海綿骨同士でしっかり癒合させるためにも圧迫固定が必要なのでしょう。