馬医者修行日記

サラブレッド生産地の大動物獣医師の日々

糞便中のVapAをPCRで定量したらR.equi感染子馬を早期発見できるか?

2024-06-24 | 馬内科学

R.equi感染子馬を早期に発見するために、糞便中のVapAをPCRで検出してはどうかという調査。

これもCohen先生が関係している。

Use of Serial Quantitative PCR of the vapA Gene of Rhodococcus equi in Feces for Early Detection of R. equi Pneumonia in Foals

子馬のR.equi肺炎の早期発見における糞便中のR.equi病原性関連タンパクA遺伝子の連続定量PCRの利用

J Vet Inter Med 2016 30(2):664-70 

Abstract

Background: Current screening tests for Rhodococcus equi pneumonia in foals lack adequate accuracy for clinical use. Real-time, quantitative PCR (qPCR) for virulent R. equi in feces has not been systematically evaluated as a screening test.

Objective: The objective of this study was to evaluate the accuracy of qPCR for vapA in serially collected fecal samples as a screening test for R. equi pneumonia in foals.

Animals: One hundred and twenty-five foals born in 2011 at a ranch in Texas.

Methods: Fecal samples were collected concurrently with thoracic ultrasonography (TUS) screening examinations at ages 3, 5, and 7 weeks. Affected (pneumonic) foals (n = 25) were matched by age and date-of-birth to unaffected (n = 25) and subclinical (ie, having thoracic TUS lesions but no clinical signs of pneumonia) foals (n = 75). DNA was extracted from feces using commercial kits and concentration of virulent R. equi in feces was determined by qPCR.

Results: Subsequently affected foals had significantly greater concentrations of vapA in feces than foals that did not develop pneumonia (unaffected and subclinical foals) at 5 and 7 weeks of age. Accuracy of fecal qPCR, however, was poor as a screening test to differentiate foals that would develop clinical signs of pneumonia from those that would remain free of clinical signs (including foals with subclinical pulmonary lesions attributed to R. equi) using receiver operating characteristic (ROC) methods.

Conclusions and clinical importance: In the population studied, serial qPCR on feces lacked adequate accuracy as a screening test for clinical R. equi foal pneumonia.

背景: 子馬のロドコッカス・エクイ肺炎の現在のスクリーニング検査は、臨床使用の適切な適切な精度を欠いている。糞便中の病原性R.equiのリアルタイム定量PCR(qPCR)は、スクリーニング検査として体系的に評価されていない。

目的: この研究の目的は、子馬のR.equi肺炎のスクリーニングテストとして、連続的に収集された糞便サンプル中のvapAのqPCRの精度を評価することであった。

動物: 2011年にテキサス州の牧場で生まれた125頭の子馬。

方法: 糞便サンプルは、3、5、および7週齢の胸部超音波検査(TUS)スクリーニング検査と同時に収集された。罹患した(肺)子馬(n = 25)を、罹患していない(n = 25)および無症候性(すなわち、胸部TUS病変を有するが肺炎の臨床徴候がない)子馬(n = 75)に年齢および生年月日で一致させた。市販のキットを使用して糞便からDNAを抽出し、糞便中の毒性R.equiの濃度をqPCRで測定した。

結果: その後、罹患した子馬は、5週齢および7週齢で肺炎を発症しなかった子馬(罹患していない無症候性の子馬)よりも、糞便中のvapA濃度が有意に高かった。しかし、糞便qPCRの精度は、肺炎の臨床徴候を発症する子馬と臨床徴候のない子馬(R. equiに起因する無症候性肺病変を有する子馬を含む)を、ROC法を用いて区別するためのスクリーニング検査としては不十分であった。

結論と臨床的重要性: 調査対象集団では、糞便に対する連続性qPCRは、臨床的R.equi子馬肺炎のスクリーニング検査として十分な精度を欠いていた。

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R.equi肺炎を発症している子馬の糞便中にはR.equi強毒株の菌数が増えることが知られている。

それを3、5、7週齢の子馬で調べたらR.equi肺炎の子馬を早期に検出できないか?という研究。

R.equi肺炎に罹患した子馬は糞便中のR.equi強毒株菌量が多い傾向にあったが、感染子馬を検出する精度には欠けていた、という結論。

R.equi肺炎を発症している子馬の糞便中にR.equi強毒株が増えるのは喀痰を飲み込むからだろう。

ほとんど肺炎症状を示さず、静かに肺に膿瘍を作られてしまう子馬の糞便中ではR.equi強毒株は有意には増えない。

5週齢、7週齢になるとR.equi肺炎を発症してくる。その前、3週齢に感染を知ることができれば、早期発見、ということになるが、それは糞便中の菌量では判断できない、ということなのだろう。

negative data (否定的な結果) なのだが、興味深い研究であり結果だ。

そして、R.equi感染を早期に見つける難しさを示している。

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土曜日、朝、3歳馬の中足骨内顆のunicortical fracture 単一皮質骨折。

最遠位部に限局した骨折のようだった。3.5 mm screw固定。

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繁殖牝馬の疝痛の依頼も来ていたので、臍ヘルニアの予定は延期してもらった。

疝痛は結腸捻転だった。

結腸の色はかなり悪かったが、切開して内容を抜いたら色調は回復した。

減圧することの意義を強く感じる。

              ー

午後、”肩”跛行が3週間続く1歳馬。

蹄、球節、腕節、肘、肩、とX線撮影しても異常なし。

上腕三頭筋、棘上筋、棘下筋の萎縮が特徴的。

腕神経叢あたりを傷めたのだろう・・・・か

              ー

続いて、腕節骨折の関節鏡手術。

              ー

1歳馬の前肢球節の腫脹、跛行。4日目。発熱もある。

感染が本態なのだろう。RLPする。

              ー

1歳馬の腰萎のX線撮影。

頸椎C5-6にはっきりした狭窄が見つかって、そのままあきらめることになった。

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後躯麻痺で起立不能になった乳母馬の剖検もしたのだった・・・・・

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ハナショウブ・ピンクが咲いた。

 

 

 



2 コメント

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Unknown (はとぽっけ)
2024-06-24 07:13:50
 無症候性で膿瘍が形成されていて強毒株を優位に排出しちゃう、その前に対処することできれば。ということですね。
 投与経路が吸入というちょっとユニークな比較的新しい抗菌薬がありますが、馬の場合は、特に子馬となれば投与量の計算ってどうするんだろ?そもそも、子馬に使えるか知りませんけれど。ちょっと高額だし、撲滅には至らない気がするけど。

 hig先生のお庭、乙女カラーが多めな印象でほんわかですね。美肌モードで撮ってあげたかのようです。
 当然、色にもこだわって選んで植栽しているのでしょ?
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>はとぽっけさん (hig)
2024-06-24 08:12:27
ロド肺膿瘍は血流からも気道からも隔離されていますから、抗菌剤治療が厳しいのでしょうね。気管支肺炎を起こしているときは吸入も有効かも知れません。

意識せずピンクを選んでいるかもしれません;笑 意識して避けているとしたら赤ですかね。
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