馬医者修行日記

サラブレッド生産地の大動物獣医師の日々

子馬のR.equi感染症の研究の潮流 この10年 2023

2024-06-08 | 馬内科学

もうひとつ子馬のR.equi感染症についての総説的文章を紹介しておく。

Rhodococcus equi-What is New This Decade?

Rhodococcus equi この10年の新しいこと

Vet Clin North Am Equine Pract. 2023 Apr;39(1):1-14

Foals become infected shortly after birth; most develop subclinical pneumonia and 20% to 30% develop clinical pneumonia that requires treatment. It is now well established that the combination of screening programs based on thoracic ultrasonography and treatment of subclinical foals with antimicrobials has led to the development of resistant Rhodococcus equi strains. Thus, targeted treatment programs are needed. Administration of R equi-specific hyperimmune plasma shortly after birth is beneficial as foals develop less severe pneumonia but does not seem to prevent infection. This article provides a summary of clinically relevant research published during this past decade.

子馬は生後早い時期に感染する。

ほとんどの子馬は非臨床的な肺炎を起こし、20%から30%の子馬が治療を必要とする臨床的な肺炎を起こす。

胸部超音波検査に基づいたスクリーニングプログラムと抗菌剤による非臨床的子馬の治療は耐性R.equi株の誘発につながることがよく知られている。

このことから、選択的な治療プログラムが必要である。

生後早い時期のR.equi高度免疫血漿投与は重度の肺炎へ悪化させないことに役立つが、感染を防ぎはしないように思われる。

この文章では、過去10年に報告された臨床関連の研究を総括する。

             ー

かつて、1990年頃には、ロドコッカス肺炎は生後2-3ヶ月の子馬の病気、と漠然と書かれていた。

われわれは生後30-45日齢に発症する子馬が最も多く、子馬は生後1ヶ月以内、それも早い時期に感染しているであろうことを血清診断(ELISA)の結果から報告した。

血液検査を利用して、早期発見・早期治療が牧場でロドコッカス感染症の被害を抑制する方法であることも報告した。

それが1990年代。

それから、胸部超音波検査や鋭敏な炎症マーカーであるSAAが臨床検査やスクリーニングに利用できるようになったが、多くの感染子馬を発見し、多くの子馬を抗菌剤治療することは、抗菌剤耐性株を誘導することにつながっている、と書かれている。

しかし、どの子馬が重症化し、どの子馬が重症化しないのか、見分ける方法は、まだ無い。

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朝の関節鏡手術が長引いた。

その間に、繁殖牝馬の疝痛が来て、倒馬室で転がっていた。

昼近くに手術室が空いたので開腹。結腸捻転だった。

交替で食事して、午後は2時半から関節鏡手術。

その間に、感染性肩関節炎の子馬の関節洗浄、そして、また疝痛の依頼。

疝痛は、結腸右背側変位だった。

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子馬のRhodococcus equi 感染症の調査・研究がうまく進まない理由のひとつは、

生産地の馬獣医師が忙しすぎるからだ。 

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もらってきて林の中に植えておいたトドマツの子。

新緑の新芽を伸ばしていた。

まわりのササに負けず、大きくなれよ。

 



2 コメント

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Unknown (はとぽっけ)
2024-06-08 06:43:40
 いろいろ重なって多忙な日だったようで。
subclinical pneumonia 初めから不顕性肺炎とか治療に反応しても保菌状態とか、母子感染とか、厄介なようだけど、そこに根治へのヒントがあるのでしょう。

 トドマツちゃん、いいところに植えてもらったようで、すくすくですね。
 清々しい朝。

 チャグチャグ馬コは今年も晴れ。すごい確率で晴れ。
 北海道の重種馬との縁でつないできた、家族のような存在の馬たち。
 いつか間近に晴れ姿を見たいものです。
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>はとぽっけさん (hig)
2024-06-09 04:29:15
膿瘍を作る細菌ですが、突然全葉性に炎症を起こしたりもします。宿主側の過剰反応なのかもしれませんが。肺に膿の塊を作るのですから、そうならないような対策を考えるべきだし、膿瘍が暴れ出さないように治療すべきだと思うのです。不顕性感染は治療すべきでない、というのはどんなものか・・・・

チャグチャグ馬っこはこの季節でしたか。いつか見てみたいものです。
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