真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「エロ教師 ONANIEづくし」(1997/製作・配給:大蔵映画/監督・脚本:小林悟/撮影:柳田友貴/照明:ICE T/編集:フィルムクラフト/助監督:堀禎一/スチール:佐藤初太郎/タイトル:ハセガワタイトル/録音:シネキャビン/現像:東映化学㈱/協力:若松劇場/出演:大倉由希恵・細川しのぶ・風間今日子・久須美欽一・坂入正三・河合純・樹かず・港雄一)。協力の若松劇場―頭に船橋がつくのが正式名称―は、同年一月大倉由希恵がデビューしたストリップ小屋、2013年八月末で閉館してゐる。
 マンション外観から軽く寄り、バスタブ内でシャワーを浴びる女の下半身。肉づきで判らぬでもないが、ティルトアップするとショートカットの細川しのぶ。正直、ネイティブな仏頂面が際立つ。電話に呼び出された三上―三上の漢字は当寸法―冴子(細川)が慌てて風呂から出ると、最近不登校の妹・瑠美を捜させてゐた恋人の金井から。他人に捜させた挙句家で湯なんか浴びてゐないで、お前も動けといふ脊髄で折り返した論難は細川しのぶのオッパイに免じてさて措くとして、瑠美が男とホテルの中に消えた目撃情報を聞くや冴子が体に巻いてゐたバスタオルを落とす、裸と映画の二兎を追つたポップな演出がそこはかとなく琴線を撫でる。毎朝一緒に家を出る瑠美が学校には行つてゐない事実を、担任の坂本加奈子(大倉)のアクシデンタルな家庭訪問で冴子は知る。遣り取りを交す加奈子と冴子を、カメラがまるでといふかまんまピンポン感覚で単調に行つたり来たりする、グルッと一周してアバンギャルドな回想を経て、傘の柄でグリグリする股間のアップに、加奈子は加奈子で瑠美を捜し奔走する画を繋げてタイトル・イン。腰回りだけで、傘の主が細川しのぶでも風間今日子でもないのも看て取れる。
 クレジット明けはホテル「スタークレセント」、瑠美(誰か判らんアテレコの風間今日子)が、一度きりしか呼称されない固有名詞を聞き取れなかつた港雄一に尺八を吹く。冴子と金井(河合)がスタクレに飛び込むも、一足違ひで瑠美らは離脱した後。泣きだして自身の妹に対する無関心を責める冴子に対し、金井が必ず捜すと慰めながらもそのまゝ大絶賛和姦に突入する大御大展開には、釣られたら負けを承知の上で、確かに姉がそんなだからと草を生やさざるを得ない。一方、こちらは真面目に生徒を捜す加奈子は、タギングだらけの公園のベンチで、ミッチ以下年金生活者の前川(久須美)に、リストラされ妻子にも逃げられたゆゑ、“リストラ”だとかどストレート且つあんまりな綽名で二人からは呼ばれる広沢。見るから怪しげな三人組と、一緒の瑠美を発見する。配役残り樹かずは、カジュアルver.の加奈子に声をかけるナンパ師。正しく第一声だけ聞かせて、カット跨ぐと即ベッド・インとかいふ清々しいまでの絡み要員。
 半ドレッド戦はそれでも見果てぬ遠い夢なのか、バラ売りex.DMMに新着した小林悟1997年第四作。2016年五月末、上野に旧題ママ―2000年新題が「高校教師 ゆびで漏れる雫」―で来てゐるため、ツートンOPかと思ひきや大蔵時代の王冠開巻に面喰ふ。この辺りの一見ランダムさに、何某かの法則性は果たしてあるのであらうか。
 開巻から飛ばす細川しのぶは、一濡れ場こなすと河合純ともども潔く退場。瑠美が何時の間にかあるいは何が何だか何となく更生するほかは、物語らしい物語も例によつて存在しない、ねえのかよ。肝心要の主演女優はといふと、瑠美の居場所と称して連れ込まれたラブホにて、まんまと三人組に輪姦されるや何はともあれもしくは何が何でも性的に点火。したものの樹かずにも満足出来ず、“ONANIEづくし”に及ぶといふ次第。常識的な映画文法の範疇では木に竹すら接ぎ損なふ、出し抜けなり乱雑な挿入にせよ、板の上での持ち芸であつたのか摩天楼と恐らく若松の舞台上での、手替へ品替へするワンマンショーは確かな完成度。足が正直長くはないものの、スレンダーな大倉由希恵がそこそこ以上に美人で、髪を纏めエレガントなおメガネで武装した女教師ver.のノーブルさと、案外ラフな普段着との対照も何気に光る。更に特筆したいのが、家でも社会でも、広沢の場合は会社から邪魔扱ひされ公園にたむろする、久須美欽一×港雄一×坂入正三の、大御大版ゲーターズとでもいふべき絶品の3ショット。久須りんに至つては、その両方に名前を連ねてゐる、偉い!何故か皆が皆グダグダ仲良く中折れしつつ、代る代る一人の女に群がるシークエンスは、輪姦のエクストリームとは全く別種の、穏やかなユーモアを惹起しなくもない。ハモニカの順番を巡り前川が広沢を突き飛ばすどさくさ紛れのギャグや、一旦上手く勃たず、再度加奈子にリベンジを挑む前川に広沢が声をかける、「頑張つて下さいよ」の援護射撃には微笑ましさをも覚える。ポリコレ?そんなもの小林悟を見るか観る時には、箱に入れて鍵をかけて棚の上にでも仕舞つて、仕舞つたことさへ忘れてしまへ。


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