真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「福マン婦人 ねつとり寝取られ」(2018/制作:関根プロダクション/提供:オーピー映画/監督・脚本:関根和美/撮影:下元哲/照明:代田橋男/録音:小林徹哉/編集:有馬潜/助監督:加藤義一/監督助手:小関裕次郎/撮影助手:榎本靖/スチール:本田あきら/音楽:友愛学園音楽部/整音:Pink-Noise/仕上げ:東映ラボ・テック/出演:江波りゅう・明里ともか・原美織・那波隆史・竹本泰志・山本宗介・なかみつせいじ)。
 朝の外景を一拍挿んで、夫婦の寝室。結婚七年、朝つぱらからの求めを夫の南圭介(なかみつ)に断られると、明日香(江波)は舌打ちしてオナニー開戦。布団の中で乳を弄り、パンティ越しの秘裂に指を這はせる案外あんまり見ない画が、結構エロい。女の裸をエロく撮るアルチザン・下元哲ここにありを、アバンから叩き込む。そんな風ゆゑ、てつきり休日かと思ひきや、圭介はけふもけふとて残業確定のど平日。溌剌とでなく出勤する圭介を、明日香がぼんやり見送つてタイトル・イン。ど平日の朝に、夫婦生活を求めたところでそれは大抵か到底断られるだらうといふ無造作なツッコミ処が、関根和美は関根和美でここにあり。
 今や池島ゆたか作よりも、どちらかといふとNSP“ニュー・関根和美's・ピンク”で御馴染の、パブ「ステージ・ドアー」。ネルシャツがダサい八巻直哉(那波)がカウンターに入り、客は紆余曲折の末に、漸く宅配弁当で一山当てた東野謙司(竹本)。そこに圭介とはステドで客同士として出会ひ、八巻とも旧知の明日香が来店。要は単なる欲求不満を、虫が目覚めただ何だと他愛なくすらない方便で正当化する明日香は、八巻も呆れる早さで東野にお持ち帰りされる、あるいはお持ち帰らせる。
 配役残り、関根和美2015年第四作「特務課の罠 いたぶり牝囚人」(主演:きみと歩実/二番手)、国沢実2016年第三作「性鬼人間第一号 ~発情回路~」(脚本:高橋祐太/主演:桜木優希音/三番手)に続くピンク第三作となる印象が、正直全然残つてゐない原美織は、スルこと済ませるやケロッと離脱しようとした明日香と玄関で鉢合はせる、訪ねるのでなく東野宅に帰つて来る間柄のキャバ嬢・水城愛。印象も残つてゐない癖に、多分今回が一番普通に可愛く撮られてゐる気がする。三十五歳といふ公称よりも、随分若く見える明里ともかは、こちらは結婚二年の八巻妻・幸枝。2018年前半戦実は殆ど出てゐない、現代ピンク最強の男前・山本宗介は、明日香が日課のジョギング中にミーツする、自称レジデント(後期臨床研修医)の北村裕也。幸枝に話を戻すと、明日香と幸枝の女二人で、買物か何か外出。まさかのランチが、そこら辺な公園のベンチにて、コンビニ的なパンとチルドカップコーヒー。無い袖を憚りもしない清々しさは、如何にもピンク映画といふのを超えて、なほ一層如何にも関根和美、もしくは如何せん関根和美。
 江波りゅう×ステージ・ドアー×なかみつせいじの組み合はせとなると、ママとブン屋が結ばれる2017年第一作「寸止めスナック めす酒場」の続篇とまではいはずとも、後日譚的なテイストの物語になるものかと勝手に予想してゐたら、ものの見事に全ッ然関係ない関根和美2018年第二作。徹頭徹尾、再度江波りゅう×ステド×なかみつせいじの組み合はせといふだけ。寧ろ通り過ぎた来し方を一々覚えてんぢやねえとでもいはんばかりの、悪びれない無頓着さが実に量産型娯楽映画的。工夫しろよなり考へろだとか難じてみせるのは、いはずもがなといふ奴だ。
 二番手三番手どころか、要はビリング頭から全員濡れ場要員といつて差し支へない、単純に明日香が愛と幸枝も巻き込む形でヤッてヤッてヤリ倒すに終始する展開は、先に触れた「寸止めスナック」後日譚的はおろか、そもそも満足な物語の体を成してゐない。中盤キーワード気味に起動する“福マン”が、肝心要の配偶者に掠りもしない天衣無縫な脇の甘さは、瞳を入れ忘れた竜がミミズになるが如き関根和美マジック。咥へてもとい加へて、文字通りの終始数撃ち続けておきながら、完遂に至る絡みは対北村の一回戦のみといふ、挙句ぞんざいな裸映画でもある。中途の濡れ場ばかりだと居心地が悪くて悪くて仕方がないのは、齢の所為で偏狭の度合いを増してゐるだけなのか?その割に標準的ロマポ並みの尺を微睡ませもせずに見せきるのは、演出部の功績といふよりは、穴のない俳優部の手柄のやうな気がする。一頃の煮ようが焼かうが食へない臭みが、那波隆史も漸く抜けて来た。

 NSP二作前の「W不倫 寝取られ妻と小悪魔娘」と、更にその前の「寸止めスナック」。今回がピンク四戦目となる江波りゅうの、初陣は2014年まで遡るデジエク第三弾「連れ込み妻 夫よりも…激しく、淫靡に。」。「連れ込み妻」を撮つた工藤雅典が、クリスマス前に大蔵電撃上陸を果たすニュースには度肝を抜かれた。工藤雅典といへば、結局終ぞエースにはなり損ねたやうな気もしつつ、にっかつ入社後本篇デビューはエクセスで果たした、生え抜きも生え抜き、公式サイトでも売り物企画のインタビュアーを任せられるほどの、嫡子と目したとて語弊のない存在である。ここから先は恣に筆を滑らせるが、そんな工藤雅典に、工藤雅典にさへ新作を撮らせられずに手放したのだとしたら、エクセスはいよいよ力尽きたのかと荒木事件以上の深い衝撃を受けた。


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