真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「情欲怪談 呪ひの赤襦袢」(2018/制作協力:映像集団マムス/提供:オーピー映画/脚本・監督:佐々木浩久/撮影:鏡早智/照明:山本浩資/録音:坂元就/特殊メイク:土肥良成/編集:大永昌弘/助監督:島崎真人/監督助手:中田円凛/スチール:宮沢豪/音楽:ゲイリー芦屋/機材提供:鈴木昭彦/仕上げ:東映ラボ・テック《株》/協力:植野亮/企画協力:『赤いにほひ』原案:木原浩勝/出演:浜崎真緒・栄川乃亜・加藤絵莉・しじみ・佐倉萌・野田博史・小坂ほたる・白石雅彦)。
 “ここに残酷あり”、“この世に残酷あり”、“あなたの中に残酷あり”。ドーンドーンドーンと大書三連打を叩きつけたモーションで、タイトルを撃ち込む開巻。センセーショナルな外連は買へなくもないものの、結果論としては派手派手しく喧伝するに値するクルーエルが、狂ひ咲く訳では別にない。何某かのオマージュであつたりするのやも知れないが、そつたら高尚なこたオラ知らね。
 何れもピンク初陣の浜崎真緒が栄川乃亜を、ドラスティックに責める。淫夢から分間宮冴子(浜崎)が目覚めると、傍らには腹部を大きく血に染めた―苗字は多分―倉橋里美(栄川)の死体が。二段構への悪夢から冴子が目覚めると、リアル傍らには大学の助教授で、夫と称する真一(野田)が。わざわざかこれ見よがしに、真一は婚姻届けの写しを持つてゐたが、冴子にその認識はなかつた。二年前、一年間の海外赴任から帰国した真一が帰宅したところ、腐敗の始まつた里美の変死体と、前後不覚の冴子が記憶を喪失してゐた。ちなみに冴子が娑婆にゐるのは、証拠不十分での不起訴。朝つぱらからの夜の営みを経て、実はその模様もモニタリングしてゐた、恐らく精神科医の進藤絵里奈(加藤)が分間宮家を当然冴子の往診に訪れる。加藤絵莉は、榊英雄の「さまよふアゲハ 蜜壺トロトロ」(2016/脚本・助監督:三輪江一/主演:水城りの/全て二作とも)・「裸の劇団 いきり立つ欲望」二部作以来のピンク第三戦。一般映画じみた外様でばかりお高くとまつてゐないで、本隊作にも出ればいいのに。憎まれ口、もしくは閑話休題。患者の配偶者に対し、“貴方”とか呼びかける絵里奈は案の定、真一とは男女の仲で通じてゐた。そんな最中、赤い腰巻―の幻影―を見たといふ冴子の訴へに、納戸から出て来た、真一祖父の日記を持ち出して絵里奈は驚愕する。
 配役残り真一の祖父で、大陸から帰国した憲兵の茂三は自動的に野田博史の二役。その間に女児の出産を挟み、渡邊元嗣2016年第一作「熟☆ギャル☆白書 極楽仁王勃ち」(脚本:山崎浩治/主演:立花はるみ)ぶり久々に濡れ場も担当する佐倉萌は茂三の、ではなく、茂三が愛人になる戦争未亡人の千代。在不在が実は本筋に影響しない、エクストラな五番手。そしてしじみが腰巻の主、遊女のお吉。茂三と身請の約束を交しつつ、果たせないまゝ結核で命を落とす。白石雅彦は、お吉が死んだ旨を茂三に伝へる、大仰な和尚。小坂ほたるは、冴子の死後分間宮家を訪ねる、冴子の元カレ・幸太郎、苗字は多分真名田か真田か愛田辺り。冴子と別れたのち女の子、あるいは女装子になつた飛び道具。突然現れた幸太郎を、絵里奈が―冴子の―変態の弟?と訝しむのは、直後に後述する前作に絡めた小ネタか。
 前作「絶倫謝肉祭 奥まで突いて!」(2017/主演:さくらみゆき)に続く佐々木浩久のピンク映画第二作は、前年の「女いうれい 美乳の怨み」(2017/主演:佐倉絆)で、復活後一勝四連敗の戦歴を山内大輔が漸くだか辛うじて引き分けに持ち込んだ、公式パブに謳つて曰く“真夏の大蔵怪談シリーズ”最新作。個々の映画自体よりも、死屍累々な企画そのものの方が寧ろ恐ろしい。
 ありがちな怨念に端を発するウェルメイドな幽霊譚に、里美が土手腹から大量出血しての死因が最終的には不明な、大雑把な姦計が絡められる。一緒くた一枚物の挙句瞬間的な代物で、クレジットも碌すつぽ見させず拙速に済ます。くらゐ、逼迫せざるを得ない羽目になる尺加減も激しく謎に、悪夢明けと我に帰る幽霊ショックとが、幸太郎登場による一時的な転調を除けばひたッすら一本調子にエンドレス。満足に纏める気の恐らく初めからない物語は当然纏まらず、かといつて目を覆つてヒエーヒエーするほど怖いかといふと、全く以てさうでもなく。大半の観客に置いてきぼりを喰らはせるにさうゐない、寧ろ映画そのものの不条理の方がよほど不可解といふ意味で怪異ではあれ、特段面白くも何ともない。幾ら量産型娯楽映画的な伝統を言祝ぐにせよ、憲兵が出て来ただけで諸手を挙げるといふのは、幾ら何でもハードルが低過ぎるのではなからうか。ベルが鳴れば涎を垂らす、犬でもあるまいし。その癖、あるいはついでに。選曲の、真面目に怖がらせる意図の有無から甚だ疑はしい、徒に饒舌なばかりの音楽も癪に触る。殊に開巻の百合、劇伴がラウドで浜崎真緒の台詞がよく聞こえないのは、全体如何なる了見の音響設計なのかと耳を疑ふか頭を抱へた。
 怖くなく面白くなく、お盆祝儀で豪華五枚の女優部を擁したにも関らず、おまけに大してエロくもないんだな、これが。前回同様、ポケーッと放り出させたオッパイを、中途半端な距離からフラットに撮るカットが延々積み重ねられるのは、ほぼほぼ暴れさせるに終始するしじみの起用法ともども根本的に考へもの。寄れよ、揉むなり吸へよ、肌の質感を感じさせて呉れよ。ここから先は純然たる一私見に過ぎないが、乳尻に拘泥のないのなら、裸映画に関らないで欲しい。旦々舎は「雪子さんの足音」で開店休業中につき、佐々木浩久は清水大敬の爪の垢―繋ぎはザクザクだけど―を飲んで、腹でも壊してしまへばいい。“清水大敬の爪の垢”なる一種のパワーワードに漂ふ、劇薬感。


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