「裸の劇団 いきり立つ欲望」(2016/制作:ファミリーツリー/提供:オーピー映画株式会社/監督:榊英雄/脚本・助監督:三輪江一/音楽:雷鳥/撮影:早坂伸/照明:藤田貴路・田島慎/録音・効果・仕上げ:丹雄二/編集:清野英樹/ヘアメイク:KAORI/スチール:富山龍太郎・You Ishii/撮影助手:小島悠介・日下部文哉/監督助手:折元星也・津田諄/制作担当:宗像良介/制作応援:岡本直樹・濱野明子/特別協力:長門薫/企画協力:木原祐輔/ロケーション協力:合同会社 エターナルウィステリアアーツ・スタジオ階梯・小劇場てあとるらぼう・協同組合 東京城北専門店會・有限会社 長崎不動産・株式会社 ユージーン・ふ~ち~く~ち~・ハーベスト・ながさきむら村議会/仕上げ:東映ラボ・テック/美術協力:ナジャペレーネ株式会社/出演:水城りの・REN・蓮実クレア・加藤絵莉・山本宗介・阿部恍沙穂・齋賀正和・三輪江一・松浦笑美・佐藤文吾・石川優実・羽柴裕吾・檜尾健太・佳那・和田光沙・針原滋・柴やすよ・とみやまあゆみ・長門薫・椿じょうじ・可児正光・中村文映・工藤望・名無しの千夜子・睡蓮みどり・ジョニー・北川和志・斉藤台樹・辻創太郎・貫井彩加・真上さつき・山田木綿香・榊英雄)。出演者中、針原滋から工藤望までと、ジョニーから山田木綿香までは本篇クレジットのみ。
タイトル開巻、前作をトレースしたかの如く、制作の上杉京子(松浦)がやきもきする中、開幕間近といふのに劇団「ネイキッドデザイア」の看板女優、に返り咲いた虹川希来莉(加藤)と、俳優部から昨今演出まで手掛け、ネイキッドを牛耳る根岸昭一(齋賀)は小屋の手洗ひで一発キメたのち、慌しく舞台に飛び込んで行く。但し、短い挿入を除けば前作を踏襲するのはこの件ばかり、以降は一切のノー・イントロダクションで、後述する「さまよふアゲハ」を未見の人間は清々しく置いてけぼりにしたまゝお話は勝手に進行して行く。敷居は低過ぎるくらゐでちやうどいゝ、と思へるひとつの量産型娯楽映画観からは、些か不親切に映らなくもない。第十回公演「蝶々夫人」が成功したネイキッドはライバル劇団「水玉スパンコール」から遠野青空(蓮実)・関サバ男(佐藤)・矢部真子(石川)の移籍組を迎へ、とりわけ青空はアイドル的人気を博してゐたが、独断的だか独善的な根岸の手法に高村康太(山本)は呆れ返る態度を隠さず距離を置き、自身が発掘した蝶々夫人の主演女優・花森揚羽(水城)に何時の間にか去られてゐたネイキッド元代表―現在は副代表らしい―の瀬田翼(REN)は、すつかり腑抜けになつてゐた。と、ころで。黙つてゐると恐らく通り過ぎて済まされるフィルモグラフィーに触れておくと、何番手にカウントしたらよいのかよく判らない石川優実は、ほんの賑やかし程度の出演に止(とど)まつた、松岡邦彦フィルム最終作「つはものどもの夢のあと 剥き出しセックス、そして…性愛」(2012/脚本:今西守・関谷和樹/主演:後藤リサ)から四年ぶり二度目にしての、濡れ場もこなすピンク本格参戦。
配役残り阿部恍沙穂は、終ぞ報はれないビアンのネイキッド劇団員・西脇里美。三輪江一は静かに翼を見守る、ネイキッド元前貼り担当、現衣装の張本健作、ついでにex.ぽんぽこ商事。榊英雄は、手洗ひをホテル代りに使ふ希来莉と根岸か高村と真子には閉口しつつも、パンティを握らされると大人しくなる小屋の支配人。羽柴裕吾は高村の友人で元々揚羽をネイキッドの観劇に誘つた、揚羽の同棲相手・加地恭平。大竹をオミットした佳那はときめきかけた京子を絶望の底に叩き落す、サバ男のブリブリな嫁・河北真白。二人とも脱ぐのが偉い―あるいは榊英雄の、女優を脱がせる才覚は評価すべきといつた方がより適切なのか―睡蓮みどりと名無しの千夜子は、当人の同意を得ることなく揚羽主演の新作の脚本に取りかゝつた、翼を挟んでキャットファイトを繰り広げる創作の女神と睡魔。殊に睡蓮みどりが多分クッソエロいので、束の間コメディ調の使ひ方は何気に激しく勿体ない。檜尾健太は水玉スパンコール主催の濱口テツで、針原滋以下本クレのみ隊が、ネイキッドがスパンコールに名義を借りて参加する演劇コンクールの、審査員と観客の客席要員。あれ、オッサン審査員と、オッサンに常時乳を揉まれてる女が針原滋と柴やすよか?そして田中幸恵役とされる和田光沙を、ロストしたのは痛恨の極み。
正しく青天の霹靂のピンク映画電撃参入作「オナニーシスター たぎる肉壺」(2015/主演:三田羽衣・西野翔・柴やすよ)から年を跨いでの、改めて前作「さまよふアゲハ 蜜壺トロトロ」と連続した前後篇二部作をなす榊英雄2016年第二作。普通に考へれば前回挨拶代りの乳見せで温存した蓮実クレアが、爆乳を爆裂させるのが二部作後篇のブーストといつた面も踏まへるとなほさら、本来裸映画的には然るべき戦法とならうところなのだが、それ以外にも法外な頭数の女優部がジャンジャカジャンジャカ気前よく脱いで呉れるにも関らず、そもそも榊英雄が女の裸あるいは裸の女をそれ以外の人か物と同じやうにしか―少なくとも今作時点では依然―撮れない監督につき、腰から下を揺さぶる有難味は相変らず殆どない。とりあへず首を傾げざるを得ないのは、折角青空が据ゑた膳を翼は食はず、自ら積極的に仕掛けておいて、青空のセックスした男の才能を推し量る特技に、根岸が最終的には怖気づく。高村に喰はれ倒す真子即ち石川優実に対し、しかもこれだけのビリング上位―ポスターではトメ―に置きながら、青空の絡みで観客の精嚢を空つぽにさせに来る気配を凡そ感じさせない、蓮実クレア(ex.安達亜美)を持ち腐らせる神経は到底理解に遠い。
尤も、又しても二度あることの三回目だつたか、と匙を投げかけた中盤。踏切前にともに傷心の京子と里美が並んだタイミングで、張本からの翼復活の報が飛び込んで来る。以降ネイキッドが再起動する件は、男と女の色恋を描くとモタモタ堂々巡りに終始する反面、榊英雄的に得意とする展開なのか、娯楽映画が綺麗に弾む。客席をも巻き込んだラストのいはば大乱交も、勃つ勃たないを一旦さて措けば、エモーションの伝播を体感出来る立派なスペクタクル、ピンクがさて措いたら駄目なんだけど。ともあれ、対蓮実クレア戦に於ける羽柴裕吾の凄まじい逆マグロぶりがある意味象徴的な、演出部俳優部双方不得手な面子で挑んだピンク映画に、三度目の正直でひとまづ新しい風が吹いたのは気持ち感じられた、この先があるのかどうか知らんがな。
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