驚きの数日間


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先週の後半は仕事で数日間外に出ていた。
その間様々な人たちと話すことが出来て、多くの情報が入り、業界の現在の空気を感じることができた。
まあ有意義な時間であったと言えるであろう。

業界大手の社長さん数人とお話しした。
ウチはごく小さい会社であるが、先々代からの長いお付き合いで、親しくさせていただいている。
で、やはり皆さんものが売れなくてだいぶ苦戦されているようだ。

まず国内の一般の販売店だが、ほとんど壊滅状態だという。
これから多くが消えていくであろうし、戻る見込みが立っていない。
安くてお得・・みたいな売り方ばかりしていたのが、ここにきて致命傷になっている。

現在のように生活費が高騰すると、安価な価格帯の購買層は、まずは生きていくのに必要なものしか買わなくなる。
耐久消費財を購入するのは、お金に余裕のある人に限られるのだ。
皆が口をそろえて「安いものが売れなくなった」という。
メーカーは国内の販売店には見切りを付けて、輸出や直売、インバウンド需要関係にシフトしている。

また噂の中国の景気後退も深刻のようだ。
例の独身の日の売上も、ある大手メーカーの話では、昨年の六割まで落ち込んだという。
ウチみたいに輸出していない小さい会社には分からないが、それだけ数字が落ち込むというのは、かなり大変な事態なのではないか・・・

一方で中国から来るバイヤーは、相変わらず強気で押しが強い人が多かった。
断りも無く展示物を撮影するし、中には歩きながら隠し撮りしていく者もいる。
まあ以前からそういうやり方ではあったのだが・・・

倫理観が無いというより、もともとそういう商売のやり方なのだ。
最初から、人の真似をして一儲けしよう・・という考え方である。
日本と違い大きい国なので、市場の規模も違って、ある会社がこの地域で売るなら、自分は似たものを作って違う土地で売る・・というやり方が出来る。

何百というチェーン店を展開する(と主張する)大手のメーカーの若い社長が来て、ウチの製品を見て、いきなり業務提携したいと切り出した。
すぐにでも工場見学に行きたいというのだが、会って1分も経たずにそんなこと言われても・・・
工場内部は秘密なので見せられないと断ったら、ああそう・・ですぐに引いた。
(他の人たちからは、そんな怪しいのに騙されるなよと、だいぶアドバイスいただいた・笑)

ただその若い社長は目は確かなようで、製品を見るやいなや目の色が変わった。
製品に触って、ここの構造はどうなっているのかと、具体的かつ的確な質問が出た。
これは実際に自分の手でちゃんとものを作っている人の反応である・・と感じた。
真似をしてやるか、あるいは手を組んだ方が早いか・・と値踏みしているようにも見えた。

今回驚いたのは、ウチが製品を自分の手で作っていると言っても、そんな事は無いだろうと、すぐには信じない人がいたことだ。
しかもそういう反応をした人が何人もいた。
目の前にメイド・イン・ジャパンと書いてあるのに、「どこの国で作っている?」と聞いてくるのだ。
いや、ウチは全部の工程を自分たちの手で作っている、と言っても、日本にこれを作れる会社があるわけない、と言うのだ。

日本人はよその国に作らせるしか能が無く、自らの手でものを作る技術も根性も無い・・というのが、すでにあちらの共通認識になっているのを感じた。
今や日本はそういう国として見られている。
グローバルと称して、その実他人に作らせて楽をしてきた代償が、ここにきて顕れてきたのだ。

でも日本の大きなメーカーは、皆国内に自分の工場を持っているでしょうと、具体的な社名を挙げると、いや、あそこは輸入していて自分でなんて作っていないと否定された。
彼らの方が、こちらの内情をよく把握しているようだ。
それが本当だとしたら、いつの間にか自分では製造しなくなった国内の企業が増えていることになる。
単純に損得だけで天秤にかけ、自らの手で作ることを放棄するという、致命的な選択をしてしまったのか・・・

日本は市場として小さいので、海外の会社は、ほとんど売り先としては考えていない。
そのため多くの海外のバイヤーは上から目線で、態度が非常に大きかった。
あくまで買ってやるというスタンスなのだ。
それはそれで仕方が無いが、技術力を失った小さい国では、相手も対等には見ていないのを感じた。

先ほど中国の景気後退の深刻さについて書いたが、一見それと話が矛盾しているようにも見える。
先行き不安なのを悟られないように、強気に見せているところもあるかもしれない。
しかし国の規模がはるかに大きいので、少々景気が落ち込んでも、まだまだ購買力のある人達がいるということなのだろう。

今回思い切って高品質で高額な商品を出してみた。
価格について話すと、中国人は、確かに高いがこの品質ならそのくらい出すお客もいる・・という反応なのに、日本人のバイヤーの場合、ほとんどが腰が引けて離れてしまった。
そういう対比が、今までに無く鮮明に見えた、驚きの大きい数日間であった。
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