トリリンガル


Z9 + NIKKOR Z 50mm f/1.2 S

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ご存知かどうか分からないが、僕はカエル語が話せる。
2021年11月6日の日記
先日も、そろそろ冬眠から覚める季節かと思い、会社の玄関で外に向けて大きな声でカエル語で鳴いてみた。
するとどこか遠くでそれに応えてカエルが鳴いてくれた。

僕はネコ語も話せる。
2021年1月16日の日記
もっともこちらは海外のネコには上手く通じないことが分かったので、ネコ語の中の日本語ではないかとも考えている。
日本のネコなら普通に会話くらいはできる。

つまり日本語、カエル語、日本ネコ語の三つの言語を話せることになる。
トリリンガルである。

会社のそばに数年前から野良猫がいる。
白地に茶色い斑点のあるネコである。
いかにも野良らしい、ふてぶてしい顔をしたやつで、鋭い目つきでこちらを睨み付ける。

僕の車のそばによく寝転がっていて、車に近付くと渋々そこから動く。
見かけるようになってすでに何年か経つ。
さすがに外観は大分くたびれてきており、ボロボロで薄汚い。

盛りのつく季節のためか、ここしばらく、外からネコの鳴き声が聞こえていた。
会社の窓を開けると、雨が降っているのに、どこかでニャーニャーとひっきりなしに鳴いている。
あいつだろうか・・と思って聞いていた。

帰宅のため玄関で鍵をかけていると、相変わらずあの鳴き声がどこかから聞こえてくる。
少し相手をしてやろうかと思い、日本ネコ語でニャーニャーと数回応えてみた。
すると、どこかから凄い勢いでネコがすっ飛んできた。

やっぱりあいつだ。
雨で濡れた路面をターッと早足に駆けてきた。
体がびしょびしょに濡れているため、いつにも増してみすぼらしく見える。

こちらを恐れる様子もなく、足元まで来てニャーニャーと大きな声で鳴いた。
そして辺りをキョロキョロと見回しながら歩き回った。
自分の声に応えてくれた鳴き声の主を探しているのだ。

僕はネコに分からないように、あらぬ方向を向いてニャーニャーと鳴いてみせた。
それから、あれぇ、どこかでネコが鳴いているなぁ・・と、とぼけた顔をして、辺りを見回してみせる。
野良猫はその演技に引っかかり、まさか僕が鳴いているとは思わず、ニャーニャーとなおも鳴きながら探している。
僕はさらに何回か分からない様に鳴いて、その野良猫をからかった。

盛りがついている事もあるだろうが、相手を探すのに必死である。
僕の日本ネコ語も、十分言葉として通じているようだ。
さらに僕は車の中に入り、窓を開けて外に向けてネコ語を発した。
どこから聞こえてくるのか分からず、野良猫は大分混乱しているようだった。

やがて野良猫は、自分が騙されたと気付いたようだ。
しばらくこちらを睨んでいたが、急に踵を返すと、元いた方向に走り出した。
その間も文句を言うようにニャーニャーと鳴きっぱなしで、お尻を大きく左右に振りながら走って行った。
プライドを傷つけられて、かなり怒っているように見えた。

翌朝会社に行くと、玄関の足元が、何やら散らかっているではないか。
池で飼っているカメにやる餌の袋が食い破られて、辺りに巻き散らされていた。
ずっとここに置いてあったのに、今までこんな事は一度もなかった。
あいつめ、仕返ししたな・・・
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