マジソン君


Z9 + NIKKOR Z 50mm f/1.2 S

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大学生の時に、同じ学科の同級生に、秋田県出身のN君という人物がいた。
入学して最初の授業の時に、皆がひとりずつ前に立ち自己紹介をした。
その際彼は、受験のため東京に出て来た日の話をした。

彼は地元で流行っていたマジソンバッグを持って試験会場に来た。
マジソンバッグというのは、皆さんご存じかと思うが、70年代に爆発的に売れたダークブルーの手提げかばんである。
僕が中学生の頃は、同級生のほとんどが持っていた。

試験を受けるために机に座ると、隣の席の受験生がバッグをじっと見ている。
それって10年くらい前に流行ったやつでしょう?・・とその受験生から言われた。
それを聞いた彼は、大変なショックを受けたという。

マジソンバッグは、地元ではなかなか手に入らない最新流行のバッグだったのだ。
それを持って得々と東京に出てきたのに・・・
彼は秋田弁でその時の衝撃的な体験を語った。

教室ではその話が大いに受けた。
彼はその気さくなキャラクターもあり、クラスの人気者になった。
周りからは「マジソン君」というあだ名で呼ばれるようになった。

大したものである。
彼は田舎から出てきたことを、最初から自分の武器として使っているのだ。
皆が喜ぶであろう話を披露し、集団に溶け込む事に見事に成功している。
もちろん、それ以前に彼が大らかで社交的な性格だった、という事もあるのだが・・・

Mrs.COLKIDは、ご存じの通り栃木県の山間部の出身であるが、同級生のうちでも活動的な人ほど、就職や進学で地元を離れて都市部に出ていったという。
ところが、地元で久しぶりにクラス会が開かれた時、特に女性のほとんどが、その後田舎に戻っているのを知り驚愕した。
東京に残り働いている者は、ほぼ自分一人しかいなかったという。

皆が一度は都会を目指す。
ところが言葉の壁などに阻まれ、どうしても都会に馴染めず、結局生まれ故郷に戻ってしまう。
マジソン君のエピソードを話すと、それが堂々と出来るかどうかが分かれ目なのだ・・とMrs.COLKIDは言う。
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