ネコ語


Z7 + NIKKOR Z 50mm f/1.8 S

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僕はネコの言葉が話せる。
ネコに向かって、鳴き声をそっくりに真似て「ニャー」と話しかけると、あれっという顔でこっちを見て「ニャー」と返してくれる。
「人間なのにネコの言葉が話せるんですね」という顔をする。
大抵のネコはそういう反応を示すので、言葉が通じている・・と思っていた。
たまにろくに反応しないネコもいるのだが、それは性格がひねくれたヤツであろう。

その自信が揺らいだのは、海外でネコに話しかけた時だ。
ヨーロッパで街中のネコに「ニャー」と話しかけてみたが、およそどのネコも返事を返してくれなかった。
それどころか、多くのネコはまったく反応さえしなかった。

最初は海外のネコは随分とすれているな・・と思った。
しかしよく観察していると、僕のニャーという鳴き声を、そもそも自分への呼びかけとは思ってはいないようにも見える。
しつこく「ニャーニャー」と鳴いてみせると、あんた一体何をしているの?・・という顔でこっちを見るのだ。

まるでネコ語が通じない。
これは・・・もしかしたらネコ語には外国語があるのではないか?・・・と思った。
恐らく僕の話すネコ語は、日本語のネコ語なのだ。
だから日本のネコにしか通用しない。
同じように「ニャー」と鳴いているように見えても、実際には国によって意味が違っているのではないか?

そんな折、白人の女性が「ミャウ、ミャウ」と下手糞な鳴き真似で、ネコを呼んでいる場面に遭遇した。
するとあの無愛想なネコが、ちゃんとニャーと返事をするではないか。
あんなでたらめな鳴き声が通用するなんて、一体どういう事なのか・・・

ここでネコ語に外国語があるという仮説が間違っていることに気付いた。
もしかしたらネコは、単に「人間が変な声を張り上げて呼んでいるな」と思っているだけかもしれない。
ネコにしてみれば、何だか一生懸命だから応えてやろうか・・というお情けの感情もあるのかもしれない。

それぞれの国のネコが、それぞれの国の人間によって作られた「ネコの鳴き声」に反応する。
反応してくれる・・と言った方がいいかもしれない。
それがニャーだろうがミャウだろうが関係なく、その国で自分たちを呼ぶために作られた合図に過ぎないのだ。
てっきり僕は、自分がネコ語を話せて、ネコとのコミュニケーションが成り立っていると思っていたが、ネコの方は仕方なく相手をしているだけだったとは・・・

もっとも僕のネコの鳴き真似は、一般の日本人がニャーなどとカタカナ的に発声するのとはちょっと違うのだ。
鼻にかけて発音する、もっとリアルな鳴き声である。

以前夜中に盛りのついたネコが自宅の庭に入ってきたのだが、家の中から姿を見せずに、ニャーニャーと色っぽい声をかけてみたことがある。
ネコはてっきり僕のことをメスネコと勘違いして、盛んにニャーニャーと応えていた。
その日から何日間か、毎晩のようにネコが迎えに来て、庭でニャーニャーと鳴くので、母親が気味悪がったほどだ。
つまり僕のネコ語は、姿を見せなければネコも騙されるほど真に迫っている・・ということになる(笑)

因みに万国共通でネコに通じるネコ語がある。
それは威嚇するときのフーッという唸り声だ。
歯を合わせて唇を膨らませて「フーッ!」と鳴らすと、大抵のネコはビックリしてあたりをキョロキョロと見回す。
ネコがふてぶてしい態度でろくに反応しない時は、フーッと一発かまして驚かしてやるのだ(笑)
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