恐ろしい話


Z7 + NIKKOR Z 24mm f/1.8 S

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知人の会社での話。
荷物を積み込む運送会社のトラックが来た。
出荷先の会社の手配したもので、大手の運送会社から回されてきたものだ。
実際には依頼を受けて来た下請けの車であるという。

会社の数人が手伝い、トラックに荷物を積み込み、1時間ほどかけて荷台に満載した。
積み終わって一息ついていると、運転手の様子が何だかおかしいのに気付いた。
最初から何となく行動や言動がおかしかったそうだが、どうしたのか聞いてみると
「この数日間、熱があってふらふらする。運転するから薬も飲めないし・・・」
と、けろりと答えたという。

一瞬凍り付き、そこにいた全員の顔色が失われた。
「バカも休み休み言え。なぜ先に言わない。あとになって実は熱がありますで済む問題だと思っているのか!」
知人は激怒し、すぐに運送会社に電話して事の次第を伝えた。
大手の運送会社であったため、電話の向こうも青くなっているのが分かったという。

積み込みを手伝った社員全員をその場に止め、まずはうがいと手洗いをさせた。
その運転手や社員が触れた場所にはアルコールをかけて消毒をした。
社員の中には、その運転手と一緒にトラックの荷台に乗って積み込みを手伝った濃厚接触者もいたという。
幸い全員マスクと手袋をして作業をしていたが、至近距離にいたことには違いない。

全員服を脱がせシャワーを浴びさせ、別の服に着替えさせた。
また各人の家に連絡して起きたことを伝えた。
知人の会社では検温やマスクの着用、消毒などを徹底させていたが、無神経なひとりの男のせいですべて吹き飛んでしまった。

すぐに運送会社が動き、問題の運転手は保健所に連れていかれた。
PCR検査が行われたが、その日は結果がはっきりしなかった。
もし新型コロナに感染していたら、謝って済む問題ではなく、補償問題にも発展しかねない。
何しろ知人の会社に来る前に、既に日本のあちこちを回ってきているのだ。

手伝った数人の社員は、誰とも接触しないように注意しながら帰宅させ、各自の家でも隔離してもらったという。
またこの数日で会社に来そうな人たちに連絡してストップさせた。
大変な騒ぎに発展してしまった。

翌日になり、新型コロナの検査結果は陰性であることが分かった。
それを聞いたときは心底ほっとして、気が抜けてしまったという。
緊張して一晩過ごしたので、ほとんど眠っておらず、どっと疲れが出たそうだ。

恐ろしいのは、そういう感覚の狂った人が実際にいるということだ。
無知とは恐ろしいもので、自分が何をしたのか理解していない。
その状態で全国を回っていたのだ。
知人はそれ以降会社の門を閉めて、宅配便の配達員なども含めて、会社に入る者全員の体温チェックをしている。

今回の運転手は、当人が熱があるなどと平気で話したことからも、恐らく単純に無知であることが原因であろう。
当人もさることながら、運送会社の管理責任が問われるところだ。
しかし実際には無症状の感染者も多いわけだし、熱を測ったところで完全に防ぐことは出来ない。
一体どうしたらいいのだろうか・・・と知人も頭を抱えていた。
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