素材


D810 + Carl Zeiss Otus 1.4/55 ZF.2

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会社の帰りに安藤製靴に立ち寄った。
いろいろな靴を買ったが、国産の靴はやはり安藤のものが一番好きだ。
作りが丁寧で、見ているだけで嬉しくなる。
お店に並んだ商品を前にすると、「革製品」としてのエネルギーを感じる。

ところで、今までメインの素材として使われていた米国のH社の革と、ついに決別するようだ。
世界的に人気が高く、引く手あまたの同社の革に、正面からNGを突きつけるのは安藤製靴くらいであろう。
品質の低下が激しく、安藤製靴の基準に合わなくなってしまったのだ。

その話は以前より聞いていた。
価格がとんでもなく値上がりした上に、クオリティも著しく低下し、これでは自社の製品には使えないと、送られてきた素材をはねた。
相手が誰であろうと、駄目なものは駄目と、きっちり拒絶するあたり、さすが安藤である。
H社の方も、あいつはうるさいと嫌がっているらしい。

しばらく原材料が手に入らず、製造に支障をきたしていた。
お店の在庫も限られており、どうなるかと心配していた。
今後は、以前より一部製品で使用されていた、イタリア・ベスタ社のレザーに変更になるようだ。
これでまた供給が安定してくれるだろう。

H社の革の信仰者は多く、やめると発表したら、在庫分を欲しがる注文があったという。
またH社の革でなければいらないという人もいて、実際に一時注文が途絶えたともいう。
しかしベスタ社の素材も十分高品質で、しかも作りは相変わらず素晴らしいため、新しい同社のラインナップも、ほどなく受け入れられるだろう。
今日はたまたま素材を入れ替えたモデルの発売日で、お店にはそれを購入しようと続々とお客が入ってきた。

製品の素材を一度にすべて新しいものに変えることは出来ず、順次入れ替えていくようだ。
今はH社のものとベスタ社のものが混在しており、モデルによってはどちらかを選ぶことになる。
完全に入れ替わるのに2ヶ月くらいかかるのではないかという話であった。

僕自身は、H社のオイルレザーの靴はいくつも持っているが、実は今度のベスタ社の革も悪くないと思っている。
確かにH社のオイルレザーは独特の感触で、あれを好む人の気持ちもわかる。
しかし品質を落とすことは出来ないと、あえて突っぱねた安藤製靴の頑固な対応は、そんなものは吹き飛ばしてしまうほど評価できるし、結果的に同社のブランド力を上げている。
そういう精神で作られた靴を履くこと自体がカッコいいではないか。
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