閉店


秋葉原を歩いていて、石丸のソフト専門店である「ジャズ&クラシック」がその日(4月4日)で閉店であることを知った。
交差点のそばの細長いビルである。
道を挟んで向かい側にある同社のソフト専門店と統合されるらしい。

実はあらかじめ葉書をもらっていて、閉店することは知っていた。
もう行くことは出来ないだろうと思っていたが、偶然最後の日に前を通り、もう一度お店に入ることが出来た。

ここにはずいぶんと通った。
昔は「石丸レコード館」と呼んでいた。
ビルひとつが全館ソフト専門店という、当時としては画期的な店であった。
あの店に行けば大抵のものは揃う・・そういう別格のお店というイメージがあった。

アナログ・レコードの時代は、購入するとカウンターでジャケットから盤を出して、盤面のキズや反りをチェックするよう促がされた。
わかったような顔をして見ていたが、いきなりレコードを裸で渡されて、高校生の頃は正直面食らった(笑)
確かに廉価な輸入盤には、中央の穴が数センチずれているといった、とんでもない不良品も混ざっていた。

このチェックではじかれた盤や返品されたレコードを対象に、傷物バーゲンとして、招待客を招き破格値で売る催しが毎年開かれた。
その招待状をもらい、朝早くから石丸電気本館の薄嫌い階段に並んだのを覚えている。
長岡派の全盛期で、ショルティの指環全曲があったら自分が買うからよろしく頼む・・などと、先に階段で大声で宣言する者もいた。

時間が来ると垂れ幕の張られた会場になだれ込む。
一番安いものは、1枚70円くらいで売られていたように記憶している。
もちろん評論家の先生方は前日に招かれて、めぼしい盤は既に入手済み・・という噂を聞いた(笑)

秋葉原に行くとレコード館には必ず立ち寄ったので、どこに何のソフトがあるのか大体把握していた。
細長くて狭い建物ではあったが、それ故か妙に親しみを感じていた。
店員さんに聞いてみたら、今の建物は昭和50年頃建ったそうで、既に35年の歳月が流れている。
それ以前に平屋の建物の時代もあったそうで、その頃から数えると50年近くあの場所で営業しているという。

僕はエレベーターで上の階に上がり、各階を覗きながら、ゆっくりと階段で下りてきた。
最後ということで、何か買って帰ろうと思い、悩んだ末ブルックナーの8番のSACDを購入した。
朝比奈指揮の20世紀最高といわれる名演である。
それと話題のピアソラのSACDを購入した。
どちらも最後に買うのにふさわしい名盤である。
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