酔生夢死浪人日記

 日々、思いついたさまざまなことを気ままに綴っていく

ミントからスルメに?~フーファイの新作を聴く

2007-10-05 00:41:26 | 音楽
 40年近くロックを聴いているが、好きなバンドは大抵、日本でブレークしない。フー、ジェスロ・タル、キュアー、マニック・ストリート・プリーチャーズといったビッグネームだけでなく、ジェームスやライヴも過小評価に甘んじていた。
 
 フー・ファイターズもまた、俺という「疫病神」に憑かれたバンドである。英ハイドパークで8万人以上を集めるなど動員力は凄まじいが、日本では今一歩だ。だからこそ「アコースティック・ショウ」(昨年12月、厚生年金会館)では最前席を確保し、デイヴ・グロールと握手できたのだが……。
 
 6thアルバム“Echoes,Silence,Patience&Grace”が先月下旬、発売された。フーファイといえば、ストレートなロックをベースに、ポップなメロディーを味付けしたキャッチーな曲が多いが、新作はしっとりした手触りで、イメージとしては最近のマニックスのアルバムに近い。

 ニルヴァーナ解散後、デイヴはスティックをピックに持ち替え、フーファイを結成する。並行してストーナーロックの代表格、クイーン・オブ・ストーン・エイジでドラマーを務め、ヘビメタ系バンドとも交流している。ハイドパークでは元クイーンのメンバーをゲストに呼ぶなど、<パンク⇒オルタナ⇒グランジ>の枠にこだわらない活動を展開してきた。

 アルバムの感想を簡単に述べる。♯1“The Pretender”~♯4はフーファイらしさに溢れているが、♯5以降のトーンは前作“In Your Honour”のディスク2(アコーティスティック)を継承している。♯8はニール・ヤング風、♯10はザ・バンド風、♯11の後半はフー風と、60~70年代の骨太ロックへのオマージュが窺えた。

 デイヴは聴く者を勇気付ける曲を作り続けてきたが、本作では詞の中身も内向きになっている。40代に近づいたひとりの男として、孤独、空虚、自省、悔恨といった感情が織り込まれている。シンガー、ギタリスト、ドラマー、メロディーメーカーに続き、デイヴは本作で詩人としての評価も確立したといえるだろう。

 先行シングル“The Pretender”が売れなかったので、アルバムもコケるのではと心配していたが、初登場でビルボード3位と、そこそこのチャートアクションを示した。刺激いっぱいのミントではなく、聴き込むほどに味が出るスルメアルバムゆえ、従来のファンの間で評価は分かれるだろう。本作のダウナーなムードと混沌は、進化へのマイルストーンではなかろうか。次作ではスケールアップし、研ぎ澄まされたフーファイに出会うことができるはずだ。

 最後に吉報を。レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンの来日が決定した。近く詳細が発表されるという。レイジはフーファイと異なり、日本でも海外同様の人気を誇っている。果たしてチケットは取れるだろうか。


コメント (2)
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