酔生夢死浪人日記

 日々、思いついたさまざまなことを気ままに綴っていく

パッキャオに騒ぐアジア人の血

2010-03-16 00:08:48 | スポーツ
 ここ数週間、俺にとっての「映画の日」(木曜日)に用事が重なり、スクリーンとご無沙汰している。代わりに録画した作品を少しずつ消化しているが、とりわけ感銘を受けたのは「蛇のひと」(WOWOW)だ。

 斬新なオリジナル脚本と冴えた演出(「重力ピエロ」の森淳一)が、主役の二人(永作博美、西島秀俊)だけでなく、個性的な脇役陣の魅力を引き出していた。哀しい宿命、紙一重の善意と悪意、割り切れない思い、解けない謎……。作品が発する光は内なるプリズムに閉じ込められ、心の闇で乱反射を繰り返している。

 良質のエンターテインメントを提供してくれるWOWOWが14日(日本時間)、WBOウエルター級王座戦を生中継した。マニー・パッキャオ(フィリピン)がジョシュア・クロッティ(ガーナ)を大差の判定で下した。

 パッキャオはイケメンと程遠い野人の風貌で、一昔前の日本人の体形に近い。その容姿に〝憎きベトコン〟を重ねるアメリカ人もいるだろうが、名だたる強豪を衝撃的な内容で次々に倒し、実力に相応しい人気を獲得した。クロッティ戦ではダラス・カウボーイズの本拠地に5万余(ソールドアウト)の観衆が集った。

 俺にとってパッキャオは、アジア人の血をたぎらせてくれる稀有な存在だ。ジョー小泉氏は<パウンド・フォー・パウンド>(クラスを超えた最強)であるばかりか、〝拳聖〟ジュガー・レイ・ロビンソンに比すべき選手と評価している。

 70年代後半から80年代前半にかけ、ボクシング界に降臨した神々が覇を競った。バンダム級の絶対王者サラテはジュニアフェザー級の怪物ゴメスに惨敗し、そのゴメスも1クラス上のサンチェスにマットを這わされた。3階級制覇の〝貴公子〟アルゲリョも、プライアーのパワーに跳ね返され、四つ目(ジュニアウエルター)の王座を掴めなかった。

 1クラス分のウエート差(2㌔余)が、時に越え難い壁になる……。パッキャオはそんなボクシングの常識をたやすく覆した。フライ級(51㌔弱)で最初のタイトルを獲得したパッキャオは、今やウエルター級(67㌔弱)王者だ。クロッティはナチュラルなウエルターだが、パッキャオのパワーに身上のディフェンスを破られていた。

 勝つことより倒れないことを選んだクロッティには、勇気、美学、執念が欠けていた。アフリカ人ボクサーの悪しき伝統である。ガーナ人の先輩クォーティはデラホーヤより確実に強かった(と信じる)が、手堅く試合を進めるうち自縄自縛に陥り、不用意にパンチを食ってダウンを奪われ、判定負けした。

 世界のボクシングファンは、メイウェザーとパッキャオの〝世紀の一戦〟を心待ちにしている。実は両者には格好の物差しが2人いる。メイウェザーはデラホーヤに2対1の判定勝ち、パッキャオは8回終了TKO勝ち。メイウェザーはハットンに10回TKO勝ち、パッキャオは2回KO勝ち。この結果からパッキャオ有利に思えるが、ボクシングに三段論法は通用しない。

 失うものがあまりに大きいから、メイウェザーはパッキャオの挑戦を受けないだろう。もし試合が実現したら、人知を超越したアジアンパワーがスピードスターを打ち砕くのではないか。予想というより、俺の願望に近いけれど……。

 融通無碍の俺は、ボクシングと並行してWWEを楽しんでいる。「レッスルマニア」の王座戦はバティスタVSシナ、ジェリコVSエッジに決まり、HBKは引退を懸けてアンダーテイカーに挑む。私怨渦巻くビンス・マクマホンとブレット・ハートの対決も見ものだ。「レッスルマニア」前日の殿堂入り式典で、猪木は何を語るのだろう。






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