英国の総選挙は解散時の予測と異なり、保守党が過半数を割った。一方で、左派色を打ち出すコービン党首に率いられた労働党は議席数、得票率とも保守党に迫る。「わたしは、ダニエル・ブレイク」に描かれたように、格差と貧困の拡大が健闘の理由だと考える。国民的歌手、いや〝世界の歌姫〟アデルの支持も大きかったはずだ。
国連特別報告者のジョセフ・カナタッチ氏、パレルモ条約の立法ガイドを書いたニコス・バッサス教授だけでなく、欧米メディアも共謀罪に疑義を唱えている。山城博治氏(沖縄平和運動議長)の長期勾留には、アムネスティーが調査に乗り出していた。メディアの自由度ランキングで、日本は72位まで低下した。
民主主義の<グローバルスタンダート>から逸脱しつつある日本だが、最大の課題は、供託金と死刑ではないか。治安維持法とセットで成立した普通選挙法の目的は無産政党の排除だったが、その精神は現在にも引き継がれ、先進国ではあり得ない制限選挙が繰り返されている。自由の気風が育まれない最大の理由は、選挙制度にある。死刑についても繰り返し記してきたが、<死刑廃止がEU加入の条件>という事実が、日本とヨーロッパの乖離を物語っている。
旧聞に属するが、電王戦でPONANZAに連敗した佐藤天彦名人が4勝2敗で稲葉陽八段を下し、防衛に成功した。21年ぶりの20代対決も、藤井聡大四段の連勝記録に霞んだ感はするが、将棋界には薫風が吹き荒んでいる。棋聖戦では24歳の斎藤慎太郎七段が挑戦中で、王位戦挑戦者決定戦では菅井竜也七段が澤田真吾六段との25歳対決を制した。ともに羽生善治3冠という強固な壁に挑むが、タイトル獲得となれば世代交代が一気に進むだろう。
先週末は鎌倉に、上京後40年にして初めて足を運んだ。今更ながら驚いたことが二つある。それは近さと賑わいだ。湘南新宿ラインで新宿から1時間の鎌倉は、観光客で溢れていた。歴史と伝統がウリだから中高年層が多いのではと想像していたが、手を繋ぐ若いカップルが目立っていた。土曜日の午後1時前に鎌倉駅に着いたが、ガイドブック等で紹介されているのか、人気店のランチに長蛇の列が出来ていた。
江ノ電鎌倉駅で「長谷寺は2時間待ち」とのアナウンスを聞き、予定を変更して江の島に向かう。大変な混雑で、展望台への道中は清水寺界隈を彷彿させる。ジャージー姿の高校生も「きついな」とこぼすほどのアップダウンだから、俺が息を切らすのも当然だ。膝をいたわりつつ休憩を挟んで、景観を楽しんだ。数匹の猫と出会ったが、物怖じせず、観光客に触れられても寝息を立てている。江の島は猫の天国なのだろう。
翌朝は9時前に長谷寺に着いたが、紫陽花路に入るまで1時間弱と、凄い人気だ。いざ列に加わると、周囲はスマホによる撮影に余念がなく、あまり前に進まない。何か本筋と離れていると感じる俺は、極めつきのアナログ派なのだろう。長谷寺の次はセットというべき大仏を鑑賞したが、想像より小さかった。
旅行の予習ではないが、録画しておいた「海街diary」(15年)を見た。数々の栄誉に浴した作品で、綾瀬はるか、長澤まさみ、夏帆、広瀬すずの四姉妹は煌めいていた。ちなみに生活目線で鎌倉が描かれていたから、桜のトンネル以外、観光ガイドの要素は小さかった。江の島で見た「しらすトースト」のメニューは、本作の影響かもしれない。
是枝裕和監督は空気を読むのが上手なのか、ファンの期待通りの作品に仕上げている。原作は漫画(吉田明生)で制作にフジテレビが絡んでいるとなれば、〝逸脱〟を期待するのは無理があるが、それでも俺は、〝猫をかぶっている〟と勘繰ってしまう。そもそも是枝は硬派のドキュメンタリー作家としてキャリアをスタートさせたし、「幻の光」、「DISTANCE」、「誰も知らない」には、社会の影と歪みが背景に描かれていた。
次作は9月公開の「三度目の殺人」で福山雅治、役所広司、広瀬すずといったキャスティングから大ヒットするだろう。でも、次の次、さらにその次でいいから、骨太の是枝ワールドを期待する。憲法、戦争、差別、官僚機構についての是枝の発言に共感を覚えた俺の、ささやかな願いである。
国連特別報告者のジョセフ・カナタッチ氏、パレルモ条約の立法ガイドを書いたニコス・バッサス教授だけでなく、欧米メディアも共謀罪に疑義を唱えている。山城博治氏(沖縄平和運動議長)の長期勾留には、アムネスティーが調査に乗り出していた。メディアの自由度ランキングで、日本は72位まで低下した。
民主主義の<グローバルスタンダート>から逸脱しつつある日本だが、最大の課題は、供託金と死刑ではないか。治安維持法とセットで成立した普通選挙法の目的は無産政党の排除だったが、その精神は現在にも引き継がれ、先進国ではあり得ない制限選挙が繰り返されている。自由の気風が育まれない最大の理由は、選挙制度にある。死刑についても繰り返し記してきたが、<死刑廃止がEU加入の条件>という事実が、日本とヨーロッパの乖離を物語っている。
旧聞に属するが、電王戦でPONANZAに連敗した佐藤天彦名人が4勝2敗で稲葉陽八段を下し、防衛に成功した。21年ぶりの20代対決も、藤井聡大四段の連勝記録に霞んだ感はするが、将棋界には薫風が吹き荒んでいる。棋聖戦では24歳の斎藤慎太郎七段が挑戦中で、王位戦挑戦者決定戦では菅井竜也七段が澤田真吾六段との25歳対決を制した。ともに羽生善治3冠という強固な壁に挑むが、タイトル獲得となれば世代交代が一気に進むだろう。
先週末は鎌倉に、上京後40年にして初めて足を運んだ。今更ながら驚いたことが二つある。それは近さと賑わいだ。湘南新宿ラインで新宿から1時間の鎌倉は、観光客で溢れていた。歴史と伝統がウリだから中高年層が多いのではと想像していたが、手を繋ぐ若いカップルが目立っていた。土曜日の午後1時前に鎌倉駅に着いたが、ガイドブック等で紹介されているのか、人気店のランチに長蛇の列が出来ていた。
江ノ電鎌倉駅で「長谷寺は2時間待ち」とのアナウンスを聞き、予定を変更して江の島に向かう。大変な混雑で、展望台への道中は清水寺界隈を彷彿させる。ジャージー姿の高校生も「きついな」とこぼすほどのアップダウンだから、俺が息を切らすのも当然だ。膝をいたわりつつ休憩を挟んで、景観を楽しんだ。数匹の猫と出会ったが、物怖じせず、観光客に触れられても寝息を立てている。江の島は猫の天国なのだろう。
翌朝は9時前に長谷寺に着いたが、紫陽花路に入るまで1時間弱と、凄い人気だ。いざ列に加わると、周囲はスマホによる撮影に余念がなく、あまり前に進まない。何か本筋と離れていると感じる俺は、極めつきのアナログ派なのだろう。長谷寺の次はセットというべき大仏を鑑賞したが、想像より小さかった。
旅行の予習ではないが、録画しておいた「海街diary」(15年)を見た。数々の栄誉に浴した作品で、綾瀬はるか、長澤まさみ、夏帆、広瀬すずの四姉妹は煌めいていた。ちなみに生活目線で鎌倉が描かれていたから、桜のトンネル以外、観光ガイドの要素は小さかった。江の島で見た「しらすトースト」のメニューは、本作の影響かもしれない。
是枝裕和監督は空気を読むのが上手なのか、ファンの期待通りの作品に仕上げている。原作は漫画(吉田明生)で制作にフジテレビが絡んでいるとなれば、〝逸脱〟を期待するのは無理があるが、それでも俺は、〝猫をかぶっている〟と勘繰ってしまう。そもそも是枝は硬派のドキュメンタリー作家としてキャリアをスタートさせたし、「幻の光」、「DISTANCE」、「誰も知らない」には、社会の影と歪みが背景に描かれていた。
次作は9月公開の「三度目の殺人」で福山雅治、役所広司、広瀬すずといったキャスティングから大ヒットするだろう。でも、次の次、さらにその次でいいから、骨太の是枝ワールドを期待する。憲法、戦争、差別、官僚機構についての是枝の発言に共感を覚えた俺の、ささやかな願いである。