インターネット(IT)はアイデンティティーの浸潤をもたらし、真の意味のグローバリズムをもたらす……。十数年前、こんな風に喧伝されていたが、真逆の事態を導いた。ある意味、日本人向きのツールだったのか、無数のタコツボはサンクチュアリと化し、排他的傾向を強めている。
河島英五は40年近く前、♪どちらも もう一方より重たいくせに どちらへも傾かないなんておかしいよ……と「てんびんばかり」の最後で絶叫していた。ITは現在、日本人の悪しきDNAというべき行動を伴わぬ相対主義を助長し、結果として権力を補強している。
俺は混沌を好む十進法的人間で、当ブログの自己紹介に<あれやこれやグツグツ煮た鍋のような人間>と記している。ITに育まれた二進法思考の分類好きに、当ブログは正体不明と映るようだ。読者が一定の数を超えないのは、その辺りにも理由があると思う。
さて、本題。バルト9(新宿)で先日、「ディス/コネクト」(13年、ヘンリー=アレックス・ルビン監督/米)を見た。重厚なテーマで完成度も高く、余韻が去らぬ傑作といえるだろう。東京では1館だけで、しかも空いていた。シネコンではなく単館系で上映していたら、お洒落なスノッブを動員できたかもしれない。
ITに纏わる三つの事件と四つの家族の内実をカットバックしながら、ストーリーは進行する。以下に整理してみた。
<A=ボイド家>…弁護士の父リッチは家族を顧みない。クラスで孤立している息子ベンは、SNSを悪用したいじめに遭い自殺を試みる。一命は取り留めたが意識は戻らない。ベンはミュージシャン志望で、シガー・ロスの大ファンだ。性同一性障害で苦悩の10代を過ごしたヨンシー(ボーカル)の曲がエンドクレジットで流れるが、〝シガー・ロス風〟のサントラが本作の奥行きを深めている。
<B=ハル夫妻>…息子を失くして以来、デレックとシンディはセックスレスで会話もない。シンディはチャットにハマり、デレックはギャンブルサイトを覗いている。口座番号がネット上で盗まれ破産に追い込まれたが、容疑者としてシンディのチャット相手が浮上した。
<C=カイルとニーナ>…ニーナは野心的なTV局リポーターだ。ポルノサイトでチャットした家出少年カイルのインタビューに成功して評価を高めるが、犯罪組織摘発に動いたFBIが介入する。調停に入るのは顧問弁護士のボイドだった。
<D=ディクソン父子>…元刑事でネット犯罪関連の調査を生業にするマイクは、ハル夫妻の依頼にも丁寧に対応する。息子ジェイソンがベンの自殺に絡んでいることに気付いた。
原題“DISCONEECT”が示す通り、主要な登場人物は絆が断ち切れている。孤独を癒やすため誰かと繋がりたいと切に願い、ネットの闇に沈んでいくのだ。今は孤独を愉しむ俺だが、十数年前までは男女を問わず接近戦を挑むタイプだった。スタンスが変わったのは、加齢による情熱の減退と数々の苦い経験で諦念が膨らんだからだが、本作を見てかつての傷口が疼いた。
憎しみは噴き出すが、爆発寸前で踏みとどまる。当事者は互いの苦悩と絶望に観応し、手触りある絆に行き当たったのだ。カイルもまた、愛に至らぬニーナとの関係にピリオドを打ち、自身を庇護する疑似家族に戻っていく。
昨年の勝ち馬はキズナだったが、手触りある絆を軸に今年のダービーを予想する。ドライな経済原理に貫かれる競馬サークルにおいて、大久保洋師と吉田豊騎手はアナログ的な師弟関係だ。メジロドーベルは厩舎ゆかりの名牝だが、大久保洋師はその孫ショウナンラグーンを最後のダービーに送り出す。同馬を軸に、トゥザワールド、イスラボニータ、レッドリヴェールを絡めて馬券を買いたい。
河島英五は40年近く前、♪どちらも もう一方より重たいくせに どちらへも傾かないなんておかしいよ……と「てんびんばかり」の最後で絶叫していた。ITは現在、日本人の悪しきDNAというべき行動を伴わぬ相対主義を助長し、結果として権力を補強している。
俺は混沌を好む十進法的人間で、当ブログの自己紹介に<あれやこれやグツグツ煮た鍋のような人間>と記している。ITに育まれた二進法思考の分類好きに、当ブログは正体不明と映るようだ。読者が一定の数を超えないのは、その辺りにも理由があると思う。
さて、本題。バルト9(新宿)で先日、「ディス/コネクト」(13年、ヘンリー=アレックス・ルビン監督/米)を見た。重厚なテーマで完成度も高く、余韻が去らぬ傑作といえるだろう。東京では1館だけで、しかも空いていた。シネコンではなく単館系で上映していたら、お洒落なスノッブを動員できたかもしれない。
ITに纏わる三つの事件と四つの家族の内実をカットバックしながら、ストーリーは進行する。以下に整理してみた。
<A=ボイド家>…弁護士の父リッチは家族を顧みない。クラスで孤立している息子ベンは、SNSを悪用したいじめに遭い自殺を試みる。一命は取り留めたが意識は戻らない。ベンはミュージシャン志望で、シガー・ロスの大ファンだ。性同一性障害で苦悩の10代を過ごしたヨンシー(ボーカル)の曲がエンドクレジットで流れるが、〝シガー・ロス風〟のサントラが本作の奥行きを深めている。
<B=ハル夫妻>…息子を失くして以来、デレックとシンディはセックスレスで会話もない。シンディはチャットにハマり、デレックはギャンブルサイトを覗いている。口座番号がネット上で盗まれ破産に追い込まれたが、容疑者としてシンディのチャット相手が浮上した。
<C=カイルとニーナ>…ニーナは野心的なTV局リポーターだ。ポルノサイトでチャットした家出少年カイルのインタビューに成功して評価を高めるが、犯罪組織摘発に動いたFBIが介入する。調停に入るのは顧問弁護士のボイドだった。
<D=ディクソン父子>…元刑事でネット犯罪関連の調査を生業にするマイクは、ハル夫妻の依頼にも丁寧に対応する。息子ジェイソンがベンの自殺に絡んでいることに気付いた。
原題“DISCONEECT”が示す通り、主要な登場人物は絆が断ち切れている。孤独を癒やすため誰かと繋がりたいと切に願い、ネットの闇に沈んでいくのだ。今は孤独を愉しむ俺だが、十数年前までは男女を問わず接近戦を挑むタイプだった。スタンスが変わったのは、加齢による情熱の減退と数々の苦い経験で諦念が膨らんだからだが、本作を見てかつての傷口が疼いた。
憎しみは噴き出すが、爆発寸前で踏みとどまる。当事者は互いの苦悩と絶望に観応し、手触りある絆に行き当たったのだ。カイルもまた、愛に至らぬニーナとの関係にピリオドを打ち、自身を庇護する疑似家族に戻っていく。
昨年の勝ち馬はキズナだったが、手触りある絆を軸に今年のダービーを予想する。ドライな経済原理に貫かれる競馬サークルにおいて、大久保洋師と吉田豊騎手はアナログ的な師弟関係だ。メジロドーベルは厩舎ゆかりの名牝だが、大久保洋師はその孫ショウナンラグーンを最後のダービーに送り出す。同馬を軸に、トゥザワールド、イスラボニータ、レッドリヴェールを絡めて馬券を買いたい。