ノーマ・チョムスキーは1966年を以下のように回想していた。<保守的なボストンでの最初のベトナム反戦デモは、私を含め参加者は少なく、葬送の列のようにおとなしかった>(論旨)……。その直後、小さなうねりが全米を覆う嵐になったことはご存じの通りである。
台湾では学生が立法府を占拠し、韓国では高校生が反政府運動の中心にいる。対照的に日本の若者は、そして国民はと嘆く向きもあるが、ケミストリーは突然起きる。〝アイデンティティー拒否症〟の俺がこの年(57歳)になって緑の党会員になったのは、同党が起爆剤、接着剤になって自由が胎動する可能性を感じたからだ。
一昨日(7日)、細川護煕、小泉純一郎の元首相タッグが「新エネルギー推進会議」を立ち上げ、設立総会には緑の党関係者も詰めかけた。俺はその日、宇都宮健児氏と想田和弘監督のトークライブ「デモクラシーを取り戻せ」(文京シビックセンター・スカイホール)に参加したが、そこにも緑の党会員の姿があった。
都知事選で反原発派は苦渋の選択を迫られたが、亀裂は修復されつつある。細川支持者から上がった<反原発には右も左もない>を見事なまでに否定したのが、新法人の成り立ちだ。俺は<体内被曝した若年層を支える医療体制の確立こそ反原発運動の軸になるべき>と主張し、新エネルギーを巡る動きに懐疑的だが、それでも法人に集った顔ぶれには納得した。元首相2人が「選挙から距離を置く」と明言しても、〝法人は新党旗揚げへのリハーサル〟と煽るメディアもある。みんなや維新などが〝抱きつき〟を狙っているが、左派、リベラル色の濃い発起人、賛同人が、原発以外は安倍首相の考えに近い候補を〝仲間〟と認めるはずがない。
法人に馳せ参じた著名人には宇都宮氏に近いメンバーもいる。ベテランの見識に宇都宮支持の自由の気風に溢れた若者が加われば、ケミストリーが起きても不思議はない。トークライブで宇都宮、想田の両氏は緑の党、三宅洋平氏に何度か言及していた。都知事選期間中、三宅氏は〝敵〟の細川氏と対談し、「次は3人(プラス宇都宮氏)で会いましょう」と提案する。その約束が現実になる可能性も十分だ。
トークライブのテーマは<選挙制度を軸にデモクラシーを考える>だった。都知事選に2度出馬した宇都宮氏、「選挙1・2」で日本の選挙制度を抉った想田氏が、自身の経験を基に語り合った。進行役は「全日本おばちゃん党」の海老原ゆかさんで、3人は同様の企画で何度か顔を合わせているらしく、和やかな雰囲気でトークは進んだ。
日本の民主主義はなぜ、<取り戻す>必要があるまで停滞したのか……。理由を探る議論は時に抽象的で不毛になるが、今回のトークライブで答えの一つが浮き彫りになった。それは、民主主義国家というにはあまりに制限された選挙制度である。公職選挙法のモデルは1925年の普通選挙法だ。治安維持法が制定された年でもあり、体制に異議を唱える勢力への凄まじい弾圧が始まった。先進国で例を見ない莫大な供託金を課して政治参加を規制する公職選挙法は明らかに違憲で、権力にとって〝転ばぬ先の杖〟である。
都知事選で奇妙な現象が起きた。街頭演説で細川候補は1万人前後、宇都宮候補も数千人を集めたが、舛添候補はせいぜい数百人程度。結果は真逆で、偏向したメディアへの批判が高まったが、問題の根はさらに深かった。<制度=ゲームの規則>を牛耳る自民党は、内向きに組織を固めれば勝てるシステムを維持している。
公職選挙法の縛りの多さに愕然とした。候補者名、写真、経歴がセットになったビラは、有権者が1000万人超の東京で30万枚しか刷れず、選挙カーから候補者の演説が聞こえる範囲のみ配布可能なのだ。<貧困と格差のない社会を目指す宇都宮候補>と候補者がいない車から政策を訴えると、警告がすぐさま来る。若者が工夫を凝らして宇都宮支持を訴えても、違反と見做されるケースが多い。「秘密保護法は言論の自由を封殺する」と反対の声が上がったが、選挙制度に異を唱えないと、民主主義は萎む一方になる。
昨年10月、<民主主義の足腰を鍛える>ことを目指し再起を図った宇都宮氏は、細川氏を準備不足の〝青い鳥候補〟と評していた。「あなたでは勝てないから降りなさい」とまで言われた以上、憤りが消えないのは当然だが、想田氏は自身の作品を踏まえ、「選挙に勝つためには妥協と不純さが必要」と語っていた。<世の中を変えるためには身近なところから始めること>が今回の結論で、志のある人の地方議会進出を両者は推奨していた。
辛淑玉氏は宇都宮候補の応援演説に集まった若者に感銘を受け、「共産党をハイジャックした」と叫んでいた。今回のトークライブで宇都宮氏は「不自由な組織に民主主義を語る資格はない」(論旨)と語っていたが、俺の耳に〝不自由な組織=共産党〟と響いた。共産党系の選対入りを阻むなど共産党と軋轢を抱えている宇都宮氏は、三宅氏とともに区議補選で緑の党候補の応援イベントに参加する。党のHPにもインタビューが連載されるなど、宇都宮氏のスタンスは心強い限りだ。
最後に緑の党会員として宣伝を。本日午後7時半から「特報都市圏」(NHK総合、再放送は翌10日午前10時50分)で前共同代表の高坂勝氏が紹介される。タイトルは「広がるダウンシフター」だ。恐らく数分で、政治活動は抜きになるだろうが、多様性、共生、浸潤するアイデンティティーを志向する高坂氏の生き方に共感される方は多いはずだ。
台湾では学生が立法府を占拠し、韓国では高校生が反政府運動の中心にいる。対照的に日本の若者は、そして国民はと嘆く向きもあるが、ケミストリーは突然起きる。〝アイデンティティー拒否症〟の俺がこの年(57歳)になって緑の党会員になったのは、同党が起爆剤、接着剤になって自由が胎動する可能性を感じたからだ。
一昨日(7日)、細川護煕、小泉純一郎の元首相タッグが「新エネルギー推進会議」を立ち上げ、設立総会には緑の党関係者も詰めかけた。俺はその日、宇都宮健児氏と想田和弘監督のトークライブ「デモクラシーを取り戻せ」(文京シビックセンター・スカイホール)に参加したが、そこにも緑の党会員の姿があった。
都知事選で反原発派は苦渋の選択を迫られたが、亀裂は修復されつつある。細川支持者から上がった<反原発には右も左もない>を見事なまでに否定したのが、新法人の成り立ちだ。俺は<体内被曝した若年層を支える医療体制の確立こそ反原発運動の軸になるべき>と主張し、新エネルギーを巡る動きに懐疑的だが、それでも法人に集った顔ぶれには納得した。元首相2人が「選挙から距離を置く」と明言しても、〝法人は新党旗揚げへのリハーサル〟と煽るメディアもある。みんなや維新などが〝抱きつき〟を狙っているが、左派、リベラル色の濃い発起人、賛同人が、原発以外は安倍首相の考えに近い候補を〝仲間〟と認めるはずがない。
法人に馳せ参じた著名人には宇都宮氏に近いメンバーもいる。ベテランの見識に宇都宮支持の自由の気風に溢れた若者が加われば、ケミストリーが起きても不思議はない。トークライブで宇都宮、想田の両氏は緑の党、三宅洋平氏に何度か言及していた。都知事選期間中、三宅氏は〝敵〟の細川氏と対談し、「次は3人(プラス宇都宮氏)で会いましょう」と提案する。その約束が現実になる可能性も十分だ。
トークライブのテーマは<選挙制度を軸にデモクラシーを考える>だった。都知事選に2度出馬した宇都宮氏、「選挙1・2」で日本の選挙制度を抉った想田氏が、自身の経験を基に語り合った。進行役は「全日本おばちゃん党」の海老原ゆかさんで、3人は同様の企画で何度か顔を合わせているらしく、和やかな雰囲気でトークは進んだ。
日本の民主主義はなぜ、<取り戻す>必要があるまで停滞したのか……。理由を探る議論は時に抽象的で不毛になるが、今回のトークライブで答えの一つが浮き彫りになった。それは、民主主義国家というにはあまりに制限された選挙制度である。公職選挙法のモデルは1925年の普通選挙法だ。治安維持法が制定された年でもあり、体制に異議を唱える勢力への凄まじい弾圧が始まった。先進国で例を見ない莫大な供託金を課して政治参加を規制する公職選挙法は明らかに違憲で、権力にとって〝転ばぬ先の杖〟である。
都知事選で奇妙な現象が起きた。街頭演説で細川候補は1万人前後、宇都宮候補も数千人を集めたが、舛添候補はせいぜい数百人程度。結果は真逆で、偏向したメディアへの批判が高まったが、問題の根はさらに深かった。<制度=ゲームの規則>を牛耳る自民党は、内向きに組織を固めれば勝てるシステムを維持している。
公職選挙法の縛りの多さに愕然とした。候補者名、写真、経歴がセットになったビラは、有権者が1000万人超の東京で30万枚しか刷れず、選挙カーから候補者の演説が聞こえる範囲のみ配布可能なのだ。<貧困と格差のない社会を目指す宇都宮候補>と候補者がいない車から政策を訴えると、警告がすぐさま来る。若者が工夫を凝らして宇都宮支持を訴えても、違反と見做されるケースが多い。「秘密保護法は言論の自由を封殺する」と反対の声が上がったが、選挙制度に異を唱えないと、民主主義は萎む一方になる。
昨年10月、<民主主義の足腰を鍛える>ことを目指し再起を図った宇都宮氏は、細川氏を準備不足の〝青い鳥候補〟と評していた。「あなたでは勝てないから降りなさい」とまで言われた以上、憤りが消えないのは当然だが、想田氏は自身の作品を踏まえ、「選挙に勝つためには妥協と不純さが必要」と語っていた。<世の中を変えるためには身近なところから始めること>が今回の結論で、志のある人の地方議会進出を両者は推奨していた。
辛淑玉氏は宇都宮候補の応援演説に集まった若者に感銘を受け、「共産党をハイジャックした」と叫んでいた。今回のトークライブで宇都宮氏は「不自由な組織に民主主義を語る資格はない」(論旨)と語っていたが、俺の耳に〝不自由な組織=共産党〟と響いた。共産党系の選対入りを阻むなど共産党と軋轢を抱えている宇都宮氏は、三宅氏とともに区議補選で緑の党候補の応援イベントに参加する。党のHPにもインタビューが連載されるなど、宇都宮氏のスタンスは心強い限りだ。
最後に緑の党会員として宣伝を。本日午後7時半から「特報都市圏」(NHK総合、再放送は翌10日午前10時50分)で前共同代表の高坂勝氏が紹介される。タイトルは「広がるダウンシフター」だ。恐らく数分で、政治活動は抜きになるだろうが、多様性、共生、浸潤するアイデンティティーを志向する高坂氏の生き方に共感される方は多いはずだ。