酔生夢死浪人日記

 日々、思いついたさまざまなことを気ままに綴っていく

頭脳警察&騒音寺~世代を超えたコラボに心沸き立つ

2013-06-24 23:50:21 | 音楽
 自公は擁立候補が全員当選と、都議選は想定通りの結果に終わる。俺が一票を投じた候補(緑の党)は、在特会シンパの維新候補に勝ってほしいという願いもむなしく、ドンジリだった。出口調査(NHK)に協力したが、<投票する参院選立候補者>のリストに山本太郎氏の名がなかったので、クレームをつけておいた。

 先の衆院選(東京7区)で7万票を獲得した山本氏は落選後、広瀬隆氏とドイツを訪れ脱原発への道筋を学ぶなど、芯が入ってきた。都知事選で100万票弱を獲得した宇都宮健児氏(反貧困ネットワーク代表)も支持に回るはずで、当選の可能性は十分にある。脱原発と護憲を歌う沢田研二は、今回も応援に駆け付けるだろうが、坂本龍一や斎藤和義は果たして……。

 欧米のロックスターは、日本より遥かに胡散臭い。アフリカ救済を掲げるライブ8(05年)終了後、デモが開催された。反グローバリズムを訴える参加者のラディカルな姿勢に焦ったのが、ライブ8の中心メンバーである。ブレア首相らの機嫌を損ねては大変と抑えにかかり、失笑を買った。反グローバリズム派が主張するように世界の構造が覆されたら、誰より困るのは自分たちであることを、ロックスターたちは重々承知している。

 ライブ8のオープニングで共演したU2とポール・マッカートニーはその後、険悪になる。ボノ(U2)とポールの家族がそれぞれ経営する化粧品会社が、商標をめぐって訴訟合戦を演じたからだ。<あんたたちにとって、アフリカは原材料の供給場所?>との厳しい声が上がったのは当然といえる。

 喜ばしいことに、日本には気骨と知性に満ちたPANTAがいる。先日(21日)、頭脳警察と騒音寺のジョイントライブを初台ドアーズで見た。PANTAのライブに触れるのは、30年以上前のPANTA&HAL、昨年のアコースティックツアー、昨暮れのPANTA復活祭に続き4度目になる。頭脳警察としては初めてで、TOSHI(パーカショニスト)の野性とユーモアを併せ持つ存在感に圧倒された。PANTAにとってここ数年の盟友である菊池琢己が、要所を押さえていた。

 「頭脳警察7」(90年)、「俺たちに明日はない」(09年)から計4曲、重信房子さんが詩を担当した響名義の「オリーブの樹の下で」(07年)からライブの定番になっている「七月のムスターファ」と、新しい曲も演奏されたが、後半は70年代の名曲のオンパレードだった。「あばよ東京」からアンコールの「銃をとれ」、「ふざけるんじゃねえよ」、「悪たれ小僧」、「歴史から飛び出せ」、そして再アンコールの「さようなら世界夫人よ」に、クチクラ化した魂を鷲掴みされる。

 オープニングアクトは初めて見る騒音寺で、演奏が始まると女の子たちが前で踊り始める。頭脳警察がお目当ての中高年は椅子に腰かけ、首を振る程度のつれない反応だ。なべ(ボーカル)のいでたちは、PANTAと交流が深いグラムロック勢に通じるものがあるが、バンド全体はソリッドだ。なべはMCで、頭脳警察への敬意を繰り返し語っていた。京都を拠点に20年近く活動し、メンバーチェンジも何度かあったという。ロックの様々な要素が坩堝で煮えているような音で、単体でいえば、頭脳警察より動員力は上だろう。

 騒音寺が引き揚げた後、20分ほどして頭脳警察が登場する。上記のPANTA、TOSHI、菊池の3人で2曲演奏した後、なべ以外の騒音寺が加わり、重厚でダイナミックなパフォーマンスが展開する。騒音寺の若いファンのボルテージが一気に上がり、客席の熱気がステージに跳ね返った。骨組みががっしりした楽曲は、2世代のコラボで鮮度を高め、<ロックの奇跡>が現出した。

 後半にはなべが白ヘルにタオル、サングラスという過激派ファッションで登場し、さらにヒートアップする。ヘルメットの文字と色が合っていないのもご愛嬌で、ステージ狭しと動き回ってアジテーションする姿に、PANTAもタジタジだった。

 ロック魂炸裂も最高だが、俺は抒情性を好む。この夜のハイライトは「あばよ東京」と「さようなら世界夫人」だった。「あばよ東京」は、♪君が砂漠になるなら 俺は希望になろう 君が海になるなら 俺は嵐になろう(中略)君が自由になるなら 俺は鎖になろう……と言葉の対比で紡がれた「悪たれ小僧」(74年)の掉尾を飾る曲だ。

 邦楽ロックの極致というべき「さようなら世界夫人」は、政治性で発禁処分になった1stアルバム(72年)収録曲で、ヘルマン・ヘッセの原詩にPANTAなりの解釈が加えられている。♪世界はがらくたの中に横たわり かつてはとても愛していたのに 今 僕らにとって死神はもはや それほど恐ろしくはないさ……。この冒頭からイメージが連なり、ラストの♪さようなら世界夫人よ さあまた 若くつやつやと身を飾れ 僕らは君の泣き声と君の笑い声にはもう飽きた……に繋がる。

 抽象的な表現だが、<世界>をどう捉えるかで印象は変わってくる。<世界=体制、世界夫人=体制に寄り添う者>が俺の堅苦しい解釈だが、ご本人に再度会う機会があれば作意を尋ねてみたい。

 昨年7月、PANTAグループとして反原発集会に参加し、その人柄に感銘を受けたことは別稿に記した通りだ。「PANTAさんは俺にとって、パティ・スミスと並ぶロックイコンです」と話すと、当人は照れていたが、先鋭性、前衛性を今も失わない姿勢は、パティ以上といってもいい。今回のライブもパティの来日公演(今年1月)に匹敵する質を誇っていた。

 前稿で記した「ヘヴン」(川上未映子)には言葉で、そして今回は音と詩で心を濾し取られた。これからもスケジュールをチェックして、PANTAもしくは頭脳警察のライブに足を運びたい。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする