酔生夢死浪人日記

 日々、思いついたさまざまなことを気ままに綴っていく

オバマ敗北とティーパーティー~米中間選挙に感じたこと

2010-11-06 02:01:52 | 社会、政治
 騒ぎが起きると、俺の中の〝一言居士〟が頭をもたげてくる。今回は禁を破ってアメリカ中間選挙について記したい。

 ある時期から、政治をテーマに据えるのを控えるようになった。匿名性に守られ、身体性抜きの言葉を吐くことに虚しさを覚えたからである。政治は目に見えない力に動かされているから、表層に踊って感情で論じても自己嫌悪に陥ることが多い。

 俺はノーマ・チョムスキー、レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン、マイケル・ムーア、グレッグ・バラストら独立系ジャーナリスト、「デモクラシーNOW!」を支持し、<アメリカ=資本主義独裁国家、情報管理社会>と規定してきた。正しさはそれなりに自負しているが、常識から逸脱した偏見に不快になった読者も少なくないだろう。

 アメリカの2大政党制なんて虚妄と斜に構えつつ、報道番組をハシゴしながら、中間選挙での民主党敗北について考えた。

 インフルエンザで毎冬3万人以上が死に、年収1000万円超の家族でも夫婦そろって病気になれば破産する……。アメリカの現状は「シッコ」(マイケル・ムーア監督)に描かれているが、企業が医療保険を運営する体制を変えない以上、矛盾は解決できない。

 医療保険改革法を民主党敗北の一因に挙げる報道が多数を占めたが、独立系メディアのトーンは異なる。成立した法案は製薬会社、保険会社との妥協の産物で、憤って棄権した支持者も多かったという。オバマは自らの裏切りによって今回の結果を招いたという分析に説得力を覚えた。

 最大の敗因は、10%弱(実質17%超)の高失業率だ。選挙戦のリポートで興味深かったのは、民主、共和両党が中国と同じ手法を用いていたことだ。貧困と格差が拡大する中国では、政府によって日本が怨嗟のはけ口にされた。今回の中間選挙では人民元や貿易摩擦を取り上げ、「中国が不況の元凶」とキャンペーンを張る候補者が続出する。

 数十兆円を投入しても景気が浮遊しなければ、「いくらつぎ込んでも企業を太らすだけ」という不満が庶民の間に蓄積するのは当然だろう。そこで勢いを増したのが〝保守派の草の根運動〟ティーパーティーで、多くの推薦候補をワシントンに送り込んだ。

 ティーパーティーについては当初、諜報機関、軍関係、大企業、人種差別主義者、反共主義者の連合体との偏見を抱いたが、現地からのリポートに見方を修正した。怪しい輩も蠢いているだろうが、集会参加者の多くは痛みに軋む中間層の白人だった。

 中山俊宏青学大教授は「プライムニュース」でアメリカの保守派を宗教保守、対外強硬論者、小さな政府志向に分類し、ティーパーティーは明らかに三つ目に属すると述べていた。GM救済や医療改革法に反対するだけでなく、海外派兵に異議を唱える者もいる。イスラム教でいえば原理主義で、共和党指導部はティ-パーティーが鬼っ子的存在になることを懸念しているという。

 中山教授はキーパーソンとして、サラ・ペイリン(アラスカ州知事、前副大統領候補)を挙げていた。前回の大統領選ではマケイン氏の足を引っ張った感もあるペイリンだが、今ではティ-パーティーのシンボルだ。次期大統領選では台風の目になるだろう。

 テレビやネットで様々な報道に触れたが、<立ち位置が変われば全く景色は違ってくる>が今回の感想だ。俺はかなり柔軟な人間だが、左翼ファウルライン上(外?)という立ち位置は20歳の頃から変わらない。外れ者にとって居心地のいいスペースである。
コメント (2)
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